上司にとって、部下との関係づくりに欠かせないのが、信頼関係の構築。ではどうすれば部下との信頼関係が築けるか。その手順を米国NLPコーチング研究所公認プロフェッショナルコーチの有岡秀郎さんに聞いた。
前編では、上司が、部下との信頼関係を高めるために日頃からやるべきことと、実際のコーチングの場面において信頼関係を高めるポイントを紹介する。
信頼関係を高めるために日頃からやるべきこと
有岡さんによると、信頼を構築することについて学術的な見解は確立されていないという。
「相手との関係性や状況によって信頼する・しないは異なりますし、上司を信頼するかどうかは部下の主観によります。ですから、信頼関係構築に絶対解はないのです。今回はコーチングスキルとして、というよりは、上司、コーチとしてのあり方という観点からお伝えします」
●信頼関係を高める大事なポイント
「コーチングを効果的に行うためには、セッション場面だけではなく、日頃のコミュニケーションの取り方が非常に大きく影響します。常日頃、信頼関係が築けていない上司に対して、コーチングのセッション場面だけ本音で自己開示するようなメンバーはまずいないでしょう。日頃の信頼関係を高めるためのポイントを順を追ってご説明します」
1.自分が信頼した上司や同僚のなかでロールモデルや原体験を振り返る
「これまで自分が上司や同僚を信頼したときの状況や言動を振り返ってみてください。棚卸しすることで、自分が望む信頼関係のポイントが明らかになってきます。逆に、これまで上司からかけられて嫌だった言動や行動をメンバーに対して行わない。これだけでもかなり効果はあると思います」
2.メンバーの個性や特性を知る
「続いて、部下やメンバーの個性や特性を深く理解してください。具体的には、性差や生い立ち、どのような価値観を持っているか深く理解してください。そのためには相手から多くの情報を引き出すことが重要になります。
しかしながら、いきなりメンバーから情報を引き出すことはむずかしいので、自分から自身の情報をメンバーに包み隠さず開示してください。ご自身がつまびらかに話をすることで、メンバー自身も言いにくいことを開放できる状態を整えていただきたいと思います。そして、日頃からメンバーを観察して、どういった志向性があり、どのような人間なのか見てください。ご興味のある方は、『ジョハリの窓』や『返報性の法則』と呼ばれるものを調べてみてください」
3.メンバーを一人の人間として尊重する
「メンバーはいま職場における成果が伸びずに悩み苦しんでいるかもしれません。また、家族や人間関係に悩んでいてモチベーションが高まっていないかもしれません。成果が上がらないからダメな人間と否定することなく、一人の人間として尊重することを忘れないでください」