駆け出しの間のリピーター獲得が大事
― 個人事業主(フリーランス)であればどんな職種もそうですが、駆け出しの期間はお客さん集めに苦労します。新人占い師は、どのように集客をはかっているのでしょうか?
高橋さん:先ほどの、もうひとつの占い師に必要な「個人事業主」という能力についてですね。これに関しては、占いに限らず他の職業と同様と思います。
まずは同じ場所(占い館やサロンなど)で継続すること。「あそこに行けばあの占い師さんに会える」と認知してもらい、リピーターさんに来てもらって安定して集客ができるようになるためには、1年くらいかかるのです。
あとはSNSなどを利用して地道に、ファンを作っていくことですね。
また、書くことが得意なら占い関連の執筆、人に教えることが好きなら占い関連の講師、作ることが好きなら占いグッズを作るなど、占い鑑定以外の収入の方法を考えてみるのもありと思います。
占いイベントなど、占いの仕事の場もさまざまに広がってきています。
高橋さんは、長年続けている占い師さんを見て、一番大事なのは、「占い師本人の魅力」だと実感しているという。こればかりは学んで身につけられるものではなく、天性の要素もあるようだ。
説話社主催の占いイベント「フォーチュンカード・マーケット」にて
専業で稼げるのは一部だが、やりがいは大きい
― 収入面についてお伺いいたします。最初の1年目の山あり谷ありを乗り越えて、ある程度は軌道に乗った2年目において、どれほどの収入を期待できる、あるいは目指すべきでしょうか?
高橋さん:少なくとも1年目は占い一本で生活できる収入を得るのは難しいと思います。それから何年かかけて、専業になれるのは「個人事業主」としてやっていける能力がある人だけでしょう。専業になってサラリーマンの平均年収以上を得ることができる人は、さらにその一部です。
収入も不安定ですから、兼業・副業の占い師さんが多いのです。私自身も、占い師と、児童書作家の兼業です。
でもいろいろな占い師さんに話を聞くと、みんな、占いという仕事に、お金に換算できない喜びと充実感を得ているのですね。
多くの占い師さんが、さまざまな苦難に遭い、挫折を乗り越えてきています。そうして人生の裏側を見てきたからこそ、同じく苦労したり悩んだりしている人の力になって、人に喜んでもらえる仕事ができることが嬉しいんです。
占い師は、決して楽に儲かる仕事ではありませんが、人の役に立つ喜びを与えてくれて、社会に必要とされる、大事な仕事だと私は思っています。
副業とする場合も地道に学ぶ姿勢が重要
― 最近、ビジネスパーソンに注目されている副業ですが、副業として占い師をやってみるにあたり、注意点やコツみたいなものはあるでしょうか?
高橋さん:占い師になりたい人が増えている今、占い師になりたい人をターゲットにしたビジネスも増えてきています。
「簡単にもうかる」という言葉にひっかからないようにすることが一番大事だと思います。そのためには情報収集も必要です。
今は地方に住んでいてもSNSなどで情報発信できる、いい時代ですね。私も占いの仕事についてさまざまな形で発信しています。今回こういう形で、お話できてよかったです。
占い師の仕事でうまくゆく秘訣は、「地道に学んで地道にお客さんとの良い関係を作っていく」。これに尽きると思います。
お客様のためでもありますし、占い業界を風通し良く、健全なものにしていくことは、占い師自身のためにもなりますから。
なかなか厳しい話もあったが、やはり他の職業と同じく、情熱ややりがいを持って続けられるか、成長のための努力を怠らないことが肝要だといえそうだ。もし、その点で自信があるのなら、チャレンジする価値は大きいだろう。
高橋桐矢さん プロフィール
福島県生まれ。タロット占いと西洋占星術を独学で習得。高校を中退して上京後、1995年から電話による占い鑑定を始め、1998年には児童文学作品でデビュー。現在は、占い関連の執筆、監修、講師と、児童書作家の兼業。最近の著作に、『占い師のオシゴト』(偕成社)、『実践 ルノルマンカード入門』(学研プラス)がある。日本児童文学者協会会員。公式ブログ:https://ameblo.jp/kiriya-report/
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)