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知って納得!JR東海の寺井常務に聞くリニアに運転士がいないワケ

2019.07.17

撮影:村上悠太

7/16発売のDIME9・10月合併号では2027年の開業に向け準備が進むリニア中央新幹線を特集している。夢の高速鉄道の開業に向け、各地で工事が進んでいるが、そんなリニアの開発に30年以上関わってきたJR東海の寺井常務に誌面に収まりきらなかった情報も含め、リニア開発のこれまでと、これからについて聞いた。

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超電導磁石を安定させることが最大の課題だった

――寺井さんは、いつからリニアに関わっているのですか?

最初に関わったのは1988年です。JR東海から鉄道総研に出向という形で、当時宮崎にあった実験線で技術開発に関わることになりました。

――宮崎ではどんなことを?

当時は1987年にJRの前身である国鉄が造った『MLU002』の走行テストを行なっていました。この車両は、時速420kmで走るよう設計されていたのですが、時速350kmを超えると超電導磁石の部分の温度が上がってしまい、速度を上げることができず、原因がわかるまで本当に苦労しました。

――なぜ、温度が上がってしまったのでしょうか?

調査の結果、車両が振動することで摩擦熱が発生することがわかりました。その熱で超電導磁石部分の温度が上がってしまっていたのです。その後はずっと、摩擦熱を出さないための試行錯誤の繰り返しで、安定した超電導磁石の開発を進めました。リニア開発の歴史を振り返っても、この超電導磁石の発熱問題を解決できたことが一番のターニングポイントだったと思います。

――その後、1997年に山梨の実験線ができましたが、山梨での実験は順調だったのでしょうか?

当初は、宮崎のトラブルを知っている人もいたので、社内でも「超電導は大丈夫か?」という声が一部でありました。ですがあの時、徹底的に原因を洗い出し、解決できたので、山梨実験線では超電導磁石のトラブルはなく、2000年に国土交通省の実用技術評価委員会より『実用化の目処がたった』との評価がありました。この時はやはりうれしかったですね。その後も現在まで超電導に関するトラブルはありません」

メンテナンス、耳ツン問題など開業に向けた改善が続く

――開業が8年後に迫っていますが、開業に向けての課題は何でしょうか?

営業線に必要な技術開発は既に完了していますが、開業後のことを考えると、まだまだやるべきことはたくさんあります。品川~名古屋を1日に何往復もする車両、列車が走るガイドウェイと呼ばれる軌道の両脇に取り付けられた地上コイル、リニアを動かすのに必要な電力設備など、中央新幹線には今までの鉄道には無かった様々な設備があり、それらのメンテナンス体系を確立し、更に効率化していく必要があります。整備に当てられる時間は東海道新幹線と同様と考えると、深夜0時から朝6時までの6時間しかありません。この間にすべての作業を終えることができる仕組みも確立しなければなりません。

そして“耳ツン”問題も重要です。リニアは南アルプス区間で標高差800~900mの区間を通ります。わずか40分の間に、アップダウンを繰り返すため、個人差はありますが、気圧差によって耳がツンとなるのをどう軽減するかが課題です。耳ツンには、トンネルに入る際の気圧変動、標高差のある路線を高速走行する標高差による気圧変動など、様々な要因があります。より快適な乗り心地を提供できるよう、開業まで引き続き車内の快適性向上に取り組んでいきます。

――営業線に必要な技術開発は完了したけれども、営業開始までの間に、まだ取り組むべき課題がたくさんあるのですね。

そうですね。他にも「保守の効率化」という面では、高温超電導磁石の開発も進めています。車両の超電導磁石は、現在、液体ヘリウムを使用して冷却しているのですが、液体ヘリウムを使用するとタンクや配管等が必要となり、構造が非常に複雑で保守にも手間がかかります。そこで液体ヘリウムを不要とし、構造が簡素で省メンテナンスな「高温超電導磁石」を開発し、山梨リニア実験線の車両に搭載し、走行試験を通じて長期耐久性の検証など、営業線に向けて様々な試験を行っています。

――最近スマホなど電子機器の非接触給電が話題となっていますが、リニアでも非接触で電力を供給する技術を活用するそうですね。ということは将来、リニアで使われた技術を応用して、一瞬でスマホをフル充電できる技術が誕生する可能性も?

超電導リニアは「誘導集電装置」と呼ばれる装置で、非接触で車上へ電気を供給します。この技術は現在の山梨リニア実験線でも既に実証しており、国からも「実用化に必要な技術が確立した」と評価されています。現在の山梨リニア実験線では、特殊な試験を行うために先頭車両にガスタービン発電機を搭載し、試験の内容によっては発電機で車上へ電気を供給していますが、営業線では発電機を一切搭載せず、すべて非接触集電とする計画です。

一方で、この「誘導集電装置」は、時速500kmで走りながら車内のバッテリーに充電するという技術。日常生活で使用するワイヤレス充電とは条件が大きく異なるものなので、今のところはこの技術をそのままの形で活用することはできないと思いますが、もしかしたら将来、生活に役立つものに応用できるものが生まれるかもしれませんね。

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