今秋、渋谷スクランブルスクエアをはじめとした数棟のオフィスビルが一気に開業するのを機に、様々なIT企業が渋谷に集まる。ここでは完成予定の新施設と渋谷を拠点とするIT企業などを紹介。渋谷がビジネス発信地へとどう変貌するかがわかるはずだ。
■ 渋谷について研究している人
「渋谷は谷底。水と同じように人が集まってくるのです」
國學院大学 研究開発センター 渋谷学研究者
石井研士さん
専門は宗教学、社会宗教学。宗教社会をフィルターにして、多角的に日本社会や文化を研究。著書に『渋谷学』(弘文堂)がある。同校の副学長も務める。
渋谷で100年に1度といわれる大規模再開発が進行中だ。駅や街を簡便に行き来するために「アーバン・コア」と呼ばれる立体的な動線のシステムを導入することで、飛躍的に便利になり、人の回遊性が高まると期待されている。「万人にやさしく」を目指すという再開発は、若者の街としてリードしてきた渋谷をどう変えるのか。石井研士さんに聞いた。
「街が二分化される可能性があります。再開発されたエリアにはビジネスパーソンが、一方、スクランブル交差点とセンター街のあるエリアに、若者たちは変わらず集まると思います」
カオスを象徴するようなセンター街のあるエリア一帯は、外国人も集まる世界的な観光スポットとなったが、一方で素行の悪い若者が集まり、お祭り騒ぎが社会問題にもなっている。しかし、石井さんは渋谷が唯一無二の街として発展したのは、こうした〝闇〟があったからこそだと指摘する。
「渋谷の魅力は猥雑さにある。もともと大資本の間隙を縫って、様々な人が自然に集まったことで、独自の文化が醸成された。どこの大都市にも闇の部分はありますが、80~90年代以降、若者のやるせなさや矛盾といった闇の部分を〝解放〟できるのが渋谷でした。ハロウィンの騒動は、その象徴です」
今回の再開発では、国内外のIT企業が集結し、米国の「シリコンバレー」ならぬ「ビットバレー」が再建されることとなる。石井さんは、ビットバレーとして発展することをすばらしいと言いつつも、こう続ける。
「この先、若者や企業が集まって、どのように育ち、あるいは淘汰されるのか……玉石混交で理路整然としないのが、実に渋谷らしい。個人的には、街も再開発で整然とはなってほしくない。いっそ徹底的に迷路のようになってほしいと思っています(笑)」
取材・文/松山ようこ イラストマップ/ワークプレス マップ協力/大柴貴紀(East Venturesフェロー)
※マップは、East Venturesフェロー・大柴貴紀が主なIT企業の住所やカテゴリーを調査。
新名所へ移転するIT企業は編集部が独自に調べた。(2019年6月19日時点)
※DIME8月号のP.88-P.89にてトクバイ、BANK、PR Table、LUXA、SeeSaaのIT企業のカテゴライズに誤りがありました。正しくは、上記です。訂正し、お詫びいたします。