アートで自分の今と未来を表現
参加者に与えられた課題は、「今の自分を表す展覧展を作ってください」というもの。
各自、目の前にあるA3サイズの白紙に、絵画のカードを何枚か選び置いてそのテーマも考えることが求められた。それから、「なぜ今の自分がそうなのか」という解説を、グループ内でシェアした。
絵を選び終わった男性参加者の1人は、同席した他の参加者に対し、以下のように話した。
「タイトルは、“イメージ&トライ”としました。これらの絵は、ここ1年の僕の歩みを表しています。社内で新しい事業を始めたのですが、それがよくわからない宇宙に飛び出した感じという心境です。
最初は具体的なところは見えていたので、こういうイメージを持っていたのですが、進んでいくにつれて、意外と“もやっとしているな”という感じがしてきて、そこからトライ・アンド・エラーを踏んできました。それを表しているような絵を選んでいます。例えば、これは“!”がある絵ですが、閃いたイメージの1つですね」
それに対し、他の参加者は短いコメントを出す、というやりとりが参加者ごとに繰り返された。
平山さんは、「今の自分がテーマでしたが、過去あるいは未来の自分にまで言及されている方が多くて、それをシェアするのは貴重な体験かと思います。アートを通じて話すことで感性が近い人、遠い人がわかりやすいかと思います。」と話す。
次いで、「10年後の自分を想像して、希望でも断定でもよいのですが、それを表す展覧会を作ってください」と、平山さんから課題が出された。
さっきと同じ参加者は、「収斂」というタイトルで、次のように説明を加えた。
「最初の課題では、試行錯誤して進んできているという話をしてきましたが、さすがに10年経つとそれらも収斂してゆくだろうと。この2枚の絵は、10年後にたどり着くまでの時間の流れを表現したものです」
それに対して、他の参加者からコメントが出て、それがグループ内でシェアされた。
平山さんからは、「それぞれ感性が近い人、遠い人はわかったでしょうか。そして、同じ絵をみて違う解釈をした人はいましたか。例えば、ユーモアを大事にしてきた方なのだろうなとか、パッションを優先してきた方かなとか、わかってきたかと思います。ご自身も、周りの方々の刺激を受け、自分はそういう人間であったと理解されたと思います」と、気づきを促す言葉が発せられ、再び参加者同士のやりとりがあった後、ワークショップが終了した。
1日のワークショップでも美意識の掘り起こしができる
このワークショップにより、自身の美意識を把握し、他者との思考プロセスの違いがわかり、創造性の発現に寄与するという。実際、参加者へのアンケートでは、「自分の思考がひらけたようでクリアになった」、「アートを題材にしているということで不安だったが、初心者でも気軽にアートの世界に入り込めた」といった感想が寄せられ、「美意識」という、どことなく捉えにくい概念への理解の深化をうかがわせるものが多かった。
法人向けのワークショップでは、これで自社の課題が見えてくるとのことで、チームビルディングや組織改革などのニーズに合わせて、オーダーメイドでワークショップを構成するという。
ワークショップに関心を持たれたらNOMAL社に問い合わせてみるとよいだろう。いずれにせよ「美意識」は、これからのトレンドワードとして注視しておきたい。
・参考資料:『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」 (山口周/光文社)
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)