これからのビジネスには美意識が必要?
先進国のビジネスリーダーの間では「新たなMBA」としてMFA(美術学修士)が注目され、美術系大学院ではエグゼクティブ向けの講座が大人気。
これは、論理と理性一辺倒の「科学的」なビジネス展開が行き詰まり、直観や感性に重きを置いた「美意識」を涵養する仕組みが模索されていることの現れだという。
日本でも、各業界のレッドオーシャン化や相次ぐ不祥事の一因が、美意識の欠如に求められるようになり、その対策をとる企業が出始めている。
それはビジネスパーソン個々人においても同様で、東京国立近代美術館が主催する2万円の講座「ビジネスセンスを鍛えるアート鑑賞ワークショップ」があっという間に満員になったのは、いかにその種のニーズが高まっているかの一例だろう。
美意識を掘り起こすワークショップでは何が行われるのか?
具体的に「美意識」はどのようにして向上させられるものなのか。筆者は、先日開催された、「自身の美意識や原点の発掘」を主な目的とした「センス・シェアリング」という名のワークショップを訪ねた。
このワークショップを主催するのは、採用コンサルティングなどを手がける株式会社NOMAL。同社は、アート通販サイトの「WASABI」や、オフィスなどへのウォールペインティングサービス「WASABI WORKING WITH ART」運営しており、通販サイトで販売されている若手アーティストが描いた絵画を素材に使うという。
今回は、デモンストレーションを兼ねた無料体験会で、法人向けの正式なワークショップを三分の二に圧縮したもの。集まった男女20人を4人ずつのグループに分けたところで、同社の取締役、平山美聡さんが次のような説明をした。
「ビジネスの世界では、直観や美意識が大事だと言われ始めています。今までは経験値やロジカルな予測で生産性を上げていればよかったのですが、それだけではもう差別化できなくなっています。ロジカルシンキングに加え、“こうしたい”という感性や直観による美意識に基づく判断。これらの要素が揃ってすごくイノベーティブな判断が起きるといわれてきています」
ワークショップのモデレーターを務めたNOMALの平山美聡さん
その前段として、ワークショップでは、「アート思考の入り口の部分について知ってもらう、自分の美意識を把握する」ことをねらうという。
参加者の各グループのデスクには赤い封筒があり、それを開けると絵画がプリントされたカードがたくさん出てきた(下写真)。
どれも抽象性の高い現代アートの作品なのは、「誰もが知っている作品ではないため、先入観で各人が同じ印象を持ちにくい。論理的に分析ができず感性で判断するしかない。他人との美意識の違いがわかりやすい」からだという。