みずほフィナンシャルグループも、今年度中に副業・兼業を解禁する方針を示すなど、副業への関心は高い。しかし、副業のせいで本業がおろそかになったり、独立するもうまくいかず、会社員に戻る人も少なくない。実際に兼業をしている遠山浩司さんと、副業を経て独立した松原舜也さんに、副業をする上での注意点や収入、副業に向いていない人の特徴など、副業にまつわるリアルな話を聞いた。
副業と本業のバランスの取り方
遠山さん:本業の会社では、地域の公共施設等の利活用など、エリアマネジメントの仕事をしています。会社で受ける案件は、予算規模が大きいものだけ。地域には、規模が小さくて会社としては断らなければならないけれど、本当におもしろいリアルな活動があって。「私が個人でやりたい。」と言ったのが、兼業を始めたきっかけです。最初の1年は無料でやっていたので、お金が発生する段階で、会社に報告をしました。現在も会社員を続けながら、「合同会社耕す」を設立し、移住促進、公共施設運営、遊休公共施設の利活用、地域プロモーションなどをしています。
松原さん:将来独立するつもりだったので、会社には、面接の段階で「5年以内に仲間を見つけて辞めます。」と、伝えていました。入社2年目の時、副業として、スタートアップに特化したwebサービスを開始すると、元上司やクライアントの紹介で、次々に仕事が入ってきました。朝5時に起きて副業の仕事をしてから出社し、帰宅後も仕事。睡眠と食事以外の時間は仕事していました。さすがに週7日稼動は辛かったです。通勤電車で座れない時は、立ちながらパソコンを打つこともありました。
遠山さん:私も仕事の納期が迫っている時は、グリーン車に乗って仕事をすることもありますが、時給換算すると元は取れます。
松原さん:当時付き合っていた彼女に「いつ会える?」と聞かれ、「2,3ヶ月後かな」と答えたらフラれました(笑)。結局手が回らなくなり、副業を始めて2ヶ月ほどで独立しました。その後も週7日稼動していましたが、さすがに限界を感じて週5日稼動にしました。結局は2日の休みも仕事してしまうのですが、”仕事しなくてもいい”という日がないと疲弊してしまいます。
遠山さん:私の場合、本業の延長に副業があります。日本中の公共施設等に営業をかけるまでは本業。予算や規模が見合わず、会社としては受けられないけれど、個人的にやりたい!というものを、私の副業案件にしています。時間的にも労力的にもロスがないのがメリットではありますが、その代わり、失敗はできません。また、本業と副業の線引が曖昧になるので、自分のリソースをはっきり振り分けるようにしています。本業の仕事はきっちりこなし、できるだけ残業はしない。副業はコワーキングスペースでする。社内では、「18時以降は外でソーシャルキャピタルを作っているやつ」というキャラをつくり、副業リソース確保の予防線を張っています。実際、社外でできた人脈が、本業の案件につながることも多々あります。
副業に向いている人、向いていない人
松原さん:副業をする人には2パターンいると思います。本業で効率的に成果を上げていて副業を始める人。もう一方は、本業が頭打ちで副業を始める人。そもそも、本業で活躍できていない人は、副業でも成果を出すのは難しいのでは。今は副業をしている人が増えているので、楽してクオリティの低い仕事をすると、他に埋もれてしまいます。
遠山さん:副業には、幾つかの段階があります。まずは、1万円でもいいから請求書を出し、1クライアントと継続的に関わる。ここまでは、誰でもできるので、試しにやってみるのもアリだと思います。クライアント1社から、紹介を受けて3社になるように広げられる人はぐっと減ります。その後、週2の副業時間で対応できる案件数の限界ラインが訪れます。副業が本業になるタイミングです。これを超えられるのは、限られた人。ちなみに、私は超えられません。本業があり、週1.5日ほどの時間を使って兼業する。奥さんと朝海に行ってカフェする時間もある。自分が心地いい状態を考えると、今がベストなんです。私が受けている案件は、ほとんどが2〜3年計画。子供が欲しいので、今年は新規案件をかなり絞っています。
松原さん:結婚して子供ができたら、さすがに週末も働くスタイルはやめるつもりです。例えば自然豊かで教育に力を入れているなど、子供のために良い環境があれば柔軟に移れるように、場所を問わず働けるようになりたいと考えています。そのために今は頑張っています。