バンガロールはどこへ向かうのか
バンガロールの人口は2011年の約850万から2017年は約1235万に増え、人口密度は東京都とほぼ同じ6000人/㎢と推定されている。世界経済フォーラムによると、バンガロールは2035年までのGDP伸び率が世界で第3番目に高い都市だ。それを支えているのはIT産業だけではない。製造業の拠点でもあり、日本からはトヨタ、ホンダ(二輪)、YKK、日清などの工場があり、他企業の工場は重工業、機械、繊維、食品加工など多岐に渡る。バンガロールといえば、無機質で人工的な、あるいはインドのイメージとしてある雑然とした街を想像するかもしれないが、実際は「インドの庭園都市」と言われてきたように、緑が多く南国の自然の豊かさがある。現代美術館や様々なアートギャラリー、歴史的な建築物、1400の寺院や400の教会を擁している、約500年前に近代都市が作られた場所だ。近年ではモノづくり産業に関連して工業やグラフィックのデザインも盛んだ。
インド人に人気のクリケットスタジアム、地元ブルーワリーやワイナリー、ラグジュアリーホテル、ブルーボトルコーヒーのようなこだわりのコーヒーショップ、レクサスのショールーム等があり、にぎわうグローバルシティだ。また半導体やIT産業の発展がめざましいハイデラバード、最も人口が多い商業と金融都市ムンバイ、インド第2の取扱量の港を持つ東海岸のチェンナイなどの主要都市に囲まれて、インド南部の経済圏に貢献している。
市街の喧騒をさえぎるかのように静かに佇む国立現代美術ギャラリー(写真提供:YourStory Media)
バンガロールの一等地にある、レクサスのブランド体験ができるショールーム「Guest Experience Center」
バンガロールのGDPは、今後16年以内に4倍になるという。インドに内在する豊富な人材と巨大市場の魅力で海外資本を惹きつける伸びしろが大きい。爆発的な人口増による交通渋滞や公害、住宅高騰、公衆衛生などのネガティブな面でさえも、それらの課題解決に資本が動いて市場の成長を支える。全ての産業に不可欠なITを強みのひとつにして、これからも躍動が続くだろう。
旅客数が年間3300万人のケンペコウダ国際空港のターミナルの増設が、今年1月に発表された。
今年4月にフリップカートのラビCTOは同社を去り、インドの東の隣国バングラディッシュのスタートアップ企業を改革してスケールアップする仕事に挑む。このアジアのシリコンバレーのベテランが次に向かう先は、アジアだ。一方、バンガロールに研究所を持つ日立はペイメントビジネスをさらに加速するという。インドでPOS端末を85万台管理している日立の子会社が、同60万台展開するインドの政府系銀行と提携すると発表された。合計150万台近い数字は、日本のPOS端末市場とは桁が異なる。日本の製造業の淘汰が進んでいる中、自社の強みをインドで着実に開花させている。
JETROの調査によるとインドに研究所を持つ企業が最も多いのは米国で620社、5位の日本は32社だ。バンガロールを起点にインド国内やアジアはじめ世界へ繋がるチャンスは大きい。日本からバンガロールへの初めての直行便を来年夏までに就航する、とJALが発表した。思い切ってこの飛行機に乗ってみてはいかがだろう。
取材・文・写真/望月奈津子
日欧米のグローバル企業でマーケティングや広報に一貫して携わる中、10年間勤めたP&Gのインド人上司の影響で、日印の共創をミッションとするムーンリンク社を設立。インドを30回訪問して築いた信頼やビジネスネットワークと現地家庭の訪問や滞在での洞察を活かし、リサーチ、視察、研修等で企業をサポートしている。