■連載/阿部純子のトレンド探検隊
6月9日は「ゼネラル・オイスターの岩牡蠣の日」
創業19年、全国に27店舗を展開するゼネラル・オイスターは、日本最大級のオイスターバーチェーン。6月9日(ロック=岩)のごろ合わせと、この時期から旬を迎える岩牡蠣のおいしさや魅力を知ってもらうため、日本記念日協会の認定を受け、6月9日を「ゼネラル・オイスターの岩牡蠣の日」に制定した。
同社は直営店舗、外食店舗への販売だけではなく、富山県入善町の「海洋深層水かきセンター」、沖縄県久米島の「ジーオー・ファーム」等、海洋深層水を利用した養殖事業を各地で手掛けている。久米島では世界初の陸上養殖を実施、安全でおいしい「あたらない牡蠣=ウイルスフリー牡蠣」の開発を進めている。
6月~8月に旬を迎える「岩牡蠣」とは
欧米では“Rのつかない月は牡蠣を食べるな”とも言われ、冬が旬のイメージの牡蠣だが、これは5~8月に産卵期を迎える「真牡蠣」のことで、逆に夏に旬を迎えるのが「岩牡蠣」。
真牡蠣は「海のミルク」と呼ばれるが、岩牡蠣は「海のチーズ」と称される。濃厚でクリーミーな岩牡蠣の魅力を、種付けから養殖まで手掛ける岩牡蠣のプロフェッショナル、海洋深層水かきセンター代表取締役社長・津久井研悟さんに聞いた。
〇「真牡蠣」と「岩牡蠣」の違い
岩牡蠣と真牡蠣は種が異なる。「Crossostrea nippona」と学術名にもあるように岩牡蠣は日本の固有種。日本での真牡蠣はほぼ100%養殖で水深から5~6mあたりで育てるのに対し、天然の岩牡蠣は水深5~10mの深い場所をメインに生息している。牡蠣のエサであるプランクトンは海面から5mあたりが多く、岩牡蠣の生息する水深の深い場所にはエサが少ないため成長するのに年月が必要で、天然の岩牡蠣は食べられるまで最低でも3年、長い場合は7年を要する。一方、養殖の真牡蠣は1~2年で食べることができる。
主な放卵期が6月~7月の真牡蠣は海が白く染まるほど一斉に放卵するのに対し、岩牡蠣は7~11月にかけて少しずつ放卵する。旬自体はどちらも大きく変わらないが、放卵のタイミングが遅いことで、岩牡蠣はお盆あたりまで良い状態でいただくことができる。下記画像は右が真牡蠣、左と上が岩牡蠣。
〇牡蠣に関しては天然より養殖の方が格段に質が高い
天然の牡蠣は年々数を減らし、品質も落ちている。天然の牡蠣は獲られた場所には二度とつかないため、素潜りで獲りつくしてしまうと、その場所は新しい漁礁を作らないと天然の牡蠣は獲れなくなってしまうという。また、養殖は牡蠣の生育に一番適した水深5mで行うが、天然はさまざまな水深に生息しており、エサが少ない深い場所にある天然牡蠣は品質が極端に落ちる。
「牡蠣については養殖に勝るものはない。牡蠣の養殖の世界では『種半』という言葉があり、牡蠣の価値は種の段階で決まってしまうというもの。実際にプロの世界では7割は種で決まると言われる。
牡蠣は雌雄同体で、年末に良質のプランクトンをたくさん食べて栄養がたっぷりの個体が雌になる。プロでも見た目では雄と雌の違いはほとんどわからない。身に注射器を入れて顕微鏡で雄雌を確認した上で受精させるが、1対で採れる卵は最低でも20万個。牡蠣は親のDNAがそのまま反映されるので、例えて言うと、ものすごいレベルの美男美女を組み合わせているということ。親の候補も100~200個あり、優秀なものを掛け合わせているのが牡蠣の養殖。海中でどのペアリングになるかわからない、しかも一度ついたところからは環境が悪くても離れられない天然ものとはまったく違う条件であり、牡蠣については養殖ものが、天然よりも格段に質が高い。
良い牡蠣は横幅、厚みがあり、左右対称でバランスが整っている。殻は年輪が出るので何年ものかは一目でわかる。牡蠣は1年ものが一番質が良い。卵や精子の放出を一度しか行っていない身の太った1年ものは海のミルク、海のチーズの味になる。2年もの、3年ものは身に卵や精子が残っているので、それがえぐみの要因になる。また、身に伸縮性が出てしまうので、焼いたときにも縮んでしまう」(津久井さん)