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ファーウェイを貿易交渉のカードとして使うには大きすぎるその代償

2019.06.06

【短期集中連載】ファーウェイショックの本質2
貿易交渉のカードとして使うにはあまりに大きいその代償とは?

 ここ数年、クローズアップされてきた米国と中国の貿易摩擦。昨年あたりからはお互いに追加関税を課すなど、貿易戦争の様を呈してきているが、その影響は私たちが普段、利用するスマートフォンにも拡がろうとしている。なかでもこの1カ月、急速に状況が変わってきたのがファーウェイ製品だ。テレビや新聞などでも報じられ、ニュースなどでもさまざまな情報が飛び交っているが、実際のところ、何が問題でこれからどうなるのだろうか。モバイル業界を長年取材してきたジャーナリスト、法林岳之氏がこの問題の本質を解説する。

ファーウェイショックの本質1:Googleが取引停止、新端末の発売延期の裏には何があった?

さらに拡がるファーウェイ排除の動き

 国内では各携帯電話会社やMVNO各社が取り扱う新製品の発売が延期されるという影響が出てしまったが、海外ではその後もさまざまな形でファーウェイを排除する動きが顕在化してきている。

 現在、スマートフォンのチップセット(CPU)としては、米クアルコム製の「Snapdragon」シリーズが広く普及していることは知られているが、ファーウェイは一部の機種を除き、自社傘下のHiSilicon製の「Kirin」シリーズを採用している。そのため、今回の規制対象となってもスマートフォンの製造には大きな影響はないという見方だったが、実はKirinシリーズはチップセットのアーキテクチャ(基本設計)として、英ARMの「ARMアーキテクチャ」を採用しており、同社からライセンスを受ける形で製造している。ちなみに、英ARMは2016年にソフトバンクグループが買収し、全株式を取得して、傘下に収めている。

 ところが、ファーウェイが規制対象となったことで、英ARMが取引を停止したというニュースが報じられた。これに対し、英ARMはファーウェイとの取引を中断していることを認め、「米国政府によって定められた規制を遵守しており、当社が準拠していることを確認するため、適切な米政府機関と継続的に話し合いを進めている」「長年のパートナーであるHiSiliconとの関係を重視し、この問題に関する迅速な解決を期待している」というコメントを発表した。この取引の中断によって、「チップセットを製造できなくなった」といった具体的な影響は、ファーウェイからもARMからも明らかにされていないが、このまま行けば、当然のことながら、チップセットのKirinシリーズの製造は難しくなる可能性が高い。

 また、欧米各国の半導体メーカーやソフトウェアベンダー、光学部品メーカーなども同様の対応を表明している。なかには取引停止に伴い、数千万ドルの減収が生じるだろうという見通しを示した企業もあり、経済面への影響はかなり大きい。国内ではソニーセミコンダクタや村田製作所、ジャパンディスプレイ、京セラ、住友電工、パナソニックなどがファーウェイに部品を供給しており、各社とも米国の制裁措置に抵触しないかどうかを含め、対応を検討している。ちなみに、ファーウェイはスマートフォンや通信設備の製造のために、日本から年間6000億円から7000億円程度の電子部品を調達しており、ファーウェイとの取引がすべて停止されると、日本の企業にもかなり大きなダメージを与えることになりそうだ。

 さらに、技術開発の面でも影響が懸念されている。米国の電気・電子技術に関する学会の「IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers/米国電気電子学会)」では、エンティティリストへの記載に伴い、ファーウェイの技術者が学会に投稿される論文の査読(論文を審査するために読むこと)を禁止することが発表された。IEEEは一般ユーザーにとって、無線LANの規格などで名前を知る存在だが、電気技術や電子技術のジャンルでは世界最大の学会であり、さまざまな技術の標準化にも関わっている。この学会の論文にもアクセスできなくなるということは、標準化される技術面においてもファーウェイが取り残されることを意味しており、影響は大きい。ちなみに、本稿執筆中の6月2日、IEEEはファーウェイに対する編集及び査読の制限を解除したことを発表している。

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