会社が行うべき事前対策とは
法的措置の検討はあくまで事後措置であり、行うべきは事前対策ですが、問題を起こさせないために何よりも大事なことは、従業員教育です。
正規職員に比べて、出入りの激しいアルバイト従業員への教育はどうしてもおろそかになりがちです。しかし、人手不足の深刻な昨今、現場を回しているのはアルバイト従業員です。
本来、家庭や学校で、社会的責任やインターネット環境の怖さを教育していくべきですが、そうも言っていられません。
企業が、各部門・各店舗の責任者任せではなく、企業全体としてその重要性を再認識し、教育を行うことが必要です。
ポイントは、こうした問題を起こしてしまった場合、その後実際にどうなってしまったのかを具体的に示し、その怖さを実感させることにあります。
では実際に問題を起こした従業員がいた場合、本人には何が起こるのでしょうか?
(1)不適切動画が拡散し、企業に損害を与えてしまい、解雇処分となる。
(2)SNS上で個人が特定され、本名、顔写真、住所、電話番号、所属大学名、家族などの個人情報が公になる。
(3)不特定多数の人間から誹謗中傷を受ける。
(4)動画・個人情報は拡散され続け、もはやインターネット上から消すことはできず残り続ける。
(5)損害を受けた企業から数千万円~数億円の損害賠償請求訴訟を起こされる。
(6)内定が決まっていた企業へも情報が伝わり、内定取り消しとなる。
(7)就職先を探そうにもどこへ行っても過去が知られてしまい、安定した職につけない。
といったことが挙げられます。
軽はずみな行動の結果、どのような不幸が待っているのかを教え込み、踏み留まらせるようにしましょう。
また、問題が起きてしまった際にまず問われることは、企業として行うべき責任を果たしていたかどうかです。
従業員教育を行った記録を残すことに加えて、最低限の規則を作成し周知しておくことが必要となります。
業務に不要なスマホの持込や業務に関する内容の投稿を禁止すること、特に問題行動に対して懲戒処分を下したい場合ですが、企業が従業員に対して懲戒処分を行う場合、
・懲戒事由を就業規則等で明らかにしておく
・懲戒処分の種類を就業規則等で決めておく
ことが不可欠となります。
懲戒事由についてはできるだけ具体的に定め、その他をカバーする包括条項も忘れずに加えておきましょう。
楽しくふざけている時には、ここまで大きな事態に発展することなど想像すらしていないのです。企業だけでなく従業員の将来を守るためにも、万全な対策を講じていきましょう。
文/小林 剛(大槻経営労務管理事務所 社労士ダイレクト事業部)
2017年2月社会保険労務士法人 大槻経営労務管理事務所入所。同年10月に社会保険労務士登録。前職ではミュージカル音響の仕事に10年間従事し、その後心機一転、社会保険労務士を志す。作業服からスーツに変わろうとも、裏方として人々を支え続けてきた感性で突き進み、入所間もない頃より、数千人規模の企業を担当し、人事対応だけでなく、従業員との直接対応までこなしている。最近では、労働基準法関連のセミナー講師も務め、その柔らかい物腰と分かりやすい説明には定評がある。