湘南に、ボランティアで空き家を再生する団体がいるという。その名も「空き家レンジャー」だ。ある時は、古民家をシェアハウスに。ある時は、社員寮をものづくり工房として再生させた。その生みの親である、加藤太一さんに空き家レンジャーの全貌について話を聞いた。
空家レンジャーの誕生
2016年、シェアハウスとして利用できる物件を探していたときに、知人から使われていない古民家を紹介されました。家の中はカビ臭く、すぐに人の住める状態ではありませんでしたが、「自分たちで改装すればシェアハウスにできる」と思い、その家を借りることにしました。
しかし、自分一人で改装できる自信がなかったので、「空家をリノベーションしたい人募集!」と、リノベーションをイベント化し、Facebookで参加者を募りました。当時は改装経験がなかったため、知り合いの大工さんにサポートしてもらいながら、まずみんなで掃除をし、廃材なども利用して各部屋を改装しました。
すると、参加者から次々と入居希望者が出てきて、改装が終わる前に、シェアハウスは満室になりました。”自分たちで作り上げた家”に愛着がわくようで、今でもそのシェアハウスに住み続けている人もいます。この活動で集まった参加者は100名を超え、ここから空き家レンジャーが誕生しました。
改装をイベント化することで、空き家改装について学びたい人や、DIYを楽しみたい人が集まり、結果的に人件費はあまりかからない。処分するのにお金がかかる廃材を業者から譲り受けることで、資材の費用も削減できる。そして、改装活動から借り手も埋まってしまう。これは革命的な空き家再生の手法だと思いました。
空き家レンジャーはそれぞれのカラーをもち、カラー名で呼び合います。ちなみに、私はピンクレンジャーです。色だけではなく、それぞれの得意技も様々で、DIY初心者からプロの建築士、水道屋、大工まで。現在は子供からお年寄りまで300人以上のメンバーが在籍しています。
空家レンジャーが誕生してから、空き家情報や相談がどんどん入ってくるようになりました。次の指令は葉山の社員寮の再生。ここも、人が住んでいたとは思えない状態でした。湘南はクリエイターやアーティストが多いのですが、騒音や、スペースの問題で、ものづくりをする場所がなく、困っていました。
そこで、社員寮をものづくり工房にすることにしました。この工房は、「葉山ファクトリー」として、場所の提供だけなく、使われなくなった廃材や工具を集めて共有しています。DIYで空き家を改装するのに、ネックとなるのが材料と道具。とくに人数が増えるほど、道具の数も必要になります。「葉山ファクトリー」では、道具や、それを使いこなすスキルも共有しています。
次第に遠方からの参加者も増えました。「自分の町の空き家を再生するためにノウハウを学びたい。」と、富山から参加した人や、「横須賀の空き家を再生したい!」という大学生が改装の経験を積んだりと、他の地域で空き家再生に挑む人たちを応援していく場にもなってきています。