3.石巻おでん(宮城県石巻市)
続いては宮城県石巻市の石巻おでん。石巻おでんプロジェクトが普及活動を行っている。そのプロジェクトを推進する、宮城学院女子大学現代ビジネス学部教授の石原慎士さんに、まずは成り立ちを聞いた。
「石巻おでんプロジェクトは、石巻市で受け継がれてきた練り物の文化を後世に残すため、2017年に石巻フードツーリズム研究会(産学・異業種連携組織)が立ち上げた取り組みです。
宮城県石巻市は、昔から練り物の原料であるスケトウダラの水揚げが盛んで、蒲鉾(かまぼこ)は明治27年から製造されていました。明治37年からは、焼きちくわの製造が始まり、全国かまぼこ連合会の資料によると、おでんの具材として使用される『ぼたん焼きちくわ』の発祥の地とされています。
かつて石巻市内には、60を超える焼きちくわのメーカーが存在し、全国でも珍しい焼きちくわ専門の組合も設立されましたが、市場の成熟化とともに生産量は減少しました。さらに、東日本大震災後は、工場が被災したことにより、生産を取りやめるメーカーが増加し、ぼたん焼きちくわを生産するメーカーは3社まで減少してしまいました。そこで立ち上がったのが本プロジェクトです。現在では、水産加工会社・飲食店・小売店など84社が参加しています」
●石巻おでんの特徴は?
(1)ぼたん焼きちくわやサバだしのおでんスープ
「石巻には、地域独自のおでんの食文化は存在しませんが、本プロジェクトでは、『石巻で生産された練り物や四季折々の地の産品を煮込んで提供する』ことを定義としています。
最近では、ぼたん焼きちくわを具材に入れ、金華さばの産地であることから、サバのだしのスープで煮込むおでんが定番になっています。つまり、石巻発祥のぼたん焼きちくわを具材に入れる、四季折々の地の産品を具材に入れる、サバだしのおでんスープで煮込むのが特徴です」
(2)石巻産の海産物の串刺しが美味
「石巻産の海産物を串に刺して、おでんの具材にすると美味しいです。個人的な意見になりますが、石巻産のほや、水だこ、芝海老はおでんの具材として適していると思います。このほか、茎わかめの細切りや牡蠣・帆立貝などの貝類などをおでんに入れると風味が増します」
●石巻おでんの具材ベスト3
石原さんの研究室と産学連携体制で開発した商品の中から、おすすめの具材のベスト3を教えてもらった。
1位 伝承牡丹焼竹輪
「昔のぼたん焼きちくわの原料であるサメを原料に加えていることにより、モチモチ感とした食感が楽しめます」
2位 宮城・石巻発鯖天
「水産加工後に残る金華さばの中骨をレトルト加工し、練り物の原料に使用しています。サバの風味と中骨のほどよい食感を楽しむことができます」
3位 鯖ちくわ
「2位と同様に金華さばの中骨をレトルト加工し、ちくわの原料に使用しています。魚本来の味がするちくわはなかなかないと思います」
地方のおでんはまだまだ全国各地に散らばっている。新潟、青森、石巻に訪れたときは、ぜひおでんを食べに行こう。
【取材協力】
越乃おでん会
越乃おでん会では『おでん休みPJT』を推進中。2月22日を国民の休日にしようというプロジェクトで全世界に向け、署名を募っている。
http://oden222.com/
青森おでんの会
「青森生姜味噌おでん」を当地の食材文化として再認識し、名物として広め、さらに地域活性化につなげるため、全国に向けて発信している。
http://www.aomori-oden.com/
石巻おでんプロジェクト
石巻フードツーリズム研究会石巻おでん部会では、毎月第3土曜日を「石巻おでんの日」として位置づけ、株式会社カクト鈴木商店(宮城県石巻市魚町2丁目1−5)で「石巻おでん具材直売会」を開催している。直売会では、部会の企業による練り物や海産物を工場特別価格で販売するとともに、季節に応じた創作おでんを無償で振る舞っている。
http://ishihara-lab.org/home/oden/
取材・文/石原亜香利