象牙に代わる印材は何?高級印材とは?
今後、印鑑を選ぶ際に、象牙ではなく、他の持続可能な印材の選択をしていくことが求められる。では、象牙に代わる素材にはどのようなものがあるのか。印材業者の担当者に聞いた。
「象牙に代わる印材としては、高価なもので言いますと、チタンなどの金属や石になると思います。チタンは特に、ここ数年で増えている印象です。ただ、チタンは手彫りができないので、手彫りであればやはり木材が代わりになるかと思います」
木材印材には、柘植(つげ)、白樺、黒檀、楓などがあり、特に柘植を素材とした鹿児島県産の「薩摩本柘」は有名だ。この木材印材の中では、やはり柘植が高級といえるのだろうか?
「柘植は高級というよりも、印鑑に適している特性があります。木材の中で印鑑に使えるものはそれほど多くありません。杉やヒノキ、桜などは柔らかかったり、密度が足りないので使えないですし、黒檀は硬いのですが、もろくて細かい細工には向いていないので認印ぐらいにしか使えません。。樺や楓、杉などに樹脂を入れて圧縮させて密度をあげれば細かい加工も可能になりますが、そのままの状態で使えるものは柘植くらいです。
また国産の柘植が良いといわれる理由は、海外でも中国の柘植や東南アジアのアカネなど似たようなものは取れるのですが、気候が暖かく、日本よりも成長が早くて、木の密度が締まっておらず、柔らかい傾向があるため、国産ほど優れていません。このことが、日本の柘植が古くから使われてきた背景かと思います」
柘植の印鑑は、日本ならではの印材といえそうだ。
では、どのような木材印材が高級と言えるのだろうか?
「高級な木材印材といえば、希少性のある『屋久杉(圧縮材)』や『ローズウッド』などがあります」
担当者によると、現在、印鑑は耐久性に優れ、環境問題にも配慮したチタンなどの金属系への流れと、手彫り職人が彫る文字にこだわった木材印鑑への2つの流れが起きているという。象牙問題を改めて認識し、賢く選択していく必要がありそうだ。
【取材協力】
環境保全団体 WILDAID
https://noivory.jp/
取材・文/石原亜香利