事故物件に実際に住んで感じた「萎えポイント」とは
事故物件がテーマの書籍やネット記事では、心霊体験について書かれていることが多いが、残念ながら筆者はそのような経験はほとんどない。
その代わり、怖い話ではなく事故物件で普通に生活するなかで亡くなった人の存在を感じて、気分が萎えてしまった瞬間があるので、そのポイントについて嘘偽りなく紹介していこう。
・外に誰もいないのにチャイムが鳴って萎える
まずは霊の存在を信じていない筆者でも、事故物件に住んでいる間は「音」に敏感になっていたことをお伝えしなければならない。
仕事上、自宅でもパソコンと向き合う時間が長かったのだが、上の階の人の足音や隣の部屋の玄関ドアの開閉音などが聞こえると作業が中断してしまったことも幾度かある。会社など、普段なら気にならない生活音に対して反応してしまうのは事故物件に住んでいたときだけだ。おそらく、無意識のうちに神経が過敏になってしまっていたのだ。
普段から音に敏感な人は、事故物件での生活は不要なストレスを抱えてしまうかもしれないので慎重に検討する必要があるだろう。
また、事故物件に住みたい人にぜひ覚えておいてほしいことは、「外に誰もいないのにチャイムが鳴ることがある」ということだ。
霊的なものではなく、入居してブレーカーを上げた際に、通電と同時に稀にチャイムが鳴ってしまうことがあるだけなのだが、不意打ちを食らってしまうと筆者のようにおおよそ成人男性とは思えない悲鳴を上げてしまうことになってしまう。そうならないためにも事故物件のブレーカーを上げる瞬間は気構えておいて損はないだろう。
・亡くなった人宛の郵送物が届いて萎える
「亡くなってしまった人宛のハガキが届く」ことも、事故物件にはありがちな萎えポイントだ。転送届は出されているはずなのに、ダイレクトメールなどが少なくとも月に1度は亡くなった人宛にポストに配達されていた。亡くなった人の名前を知ってしまうのは気持ち良いことではないし、朝の出社前にそのようなハガキを見て「今日も元気に働こう!」と思える人はなかなかいないのではないだろうか。
個人的には、自殺した人宛に届いたイベントの案内状に記載してあった会場が、当時の勤務先と同じビルだったときはさすがに気味が悪かった。
前の住人宛に郵送物が届くことは珍しいことでもなんでもないのだが、妙な縁を感じてしまうのはあまり精神的に良いとは言えないと思う。
・部屋のレイアウトが制限されて萎える
こちらも当然といえば当然かもしれない。筆者は事故物件を借りる際、部屋のどこでどのように亡くなったのか。ということを不動産会社の担当者に質問していた。担当者は、最初は「知らない方が良いですよ」と言ったのだが、しつこく尋ねると物件Aの住人は布団の上、物件Bの住人はロフトの手すりからロープで首を吊って亡くなったことを教えてくれた。このことがレイアウトの制限につながってしまったのだ。
まず物件Aで孤独死した住人が「部屋の隅の布団の上で亡くなった」と知ってしまうと、そこに同じように布団を敷くのははばかられる。また、自殺現場に背を向けるようにパソコンを配置したときは、背後がちらちらと気になり作業に集中できないこともあった。
結局、物件Aの部屋の入口のすぐそばに寝床をつくる羽目になってしまった。ただでさえ家具配置の自由度の少ない1Kや1Rの事故物件に住む際は、死亡状況などは敢えて聞かず「知らぬが仏」を貫く方が後々の住みやすさにつながるかもしれない。
筆者の経験を振り返ると安い家賃には助けられたものの、事故物件には入居当初は想定していなかった「萎えポイント」もあったのも確かだ。
現在、事故物件を探している人は、今回紹介した点が気にならないかどうか自問自答してから検討しても遅くはないではないだろうか。
文/藤広冨之