5.プライベートを詮索して距離を縮めようとする
「ケースバイケースではありますが、『休日は何をしているの?』と男性上司が女性社員に尋ねるのも、セクハラグレーゾーンに入るそうです。新人との距離を縮めたい気持ちは分かりますが、仕事とプライベートをしっかり分けたい新人が多い現代では、プライベートなことを聞くタイミングや内容に考慮しなければなりません。それは男性対男性でも同様です。新人は『その質問には答えたくありません。』と言いたくても、上司ですので断れずに笑ってごまかすこともあります。上司には新人のプライベートを干渉する権利はありません。プライベートの話をしないと、何か他人みたいで距離が遠く感じるのは、実は上司だけかもしれません」
●好ましい行動
「新人といっても色々なタイプがいます。プライベートを話したい新人もいるので、こちらから詮索するのではなく、上司から自分のプライベートの話をして、自発的に話してくるのを待つのがベストです。ただ、仕事に関連することでプライベートを聞かなければいけない場合は、理由を伝えてから聞いてください」
6.新人の意見や行動を否定する
「新人は経験がない分、浅い考えや、社会人として甘い意見もあると思います。しかし『その考えでは上手くいかない』『それは連絡しても無駄だ』などと否定ばかりしていては、新人は意見も言わなくなり、自主的に行動もしなくなります。
また『今ドキの新人は』という言葉も否定が入っています。『こうあるべきだ』と固定観念が強いと、新人に自分の考えを押し付けて型にはめようとします。誰でも、自分のことを否定されるのは嫌なものです。毎回、否定から入ると、新人との人間関係の質も悪くなります。新人が自分なりに考えて言ってきた意見に対して『失敗したらどう責任とるの?』と返すのもNGです。ほめられ、肯定されて育ってきた新人は、否定することで委縮してしまうケースがあります。また新人の能力まで潰す可能性があります」
●好ましい行動
「コミュニケーションを円滑にするために、新人の“意見を聴く・受け入れる・理解する”ことは大切です。新人だからこその意見は、上司にとって勉強になることもたくさんあります。上司が新人の意見を尊重すれば、新人にとっても会社の中での存在価値が生まれ、仕事へのやりがいにつながります。そうなれば、仕事の成果も出やすくなり、上司の期待にも応えてくれるようになるでしょう」
7.残業する新人を評価する
「働き方改革が進む中で、まだ『いつも遅くまで頑張っているな』と、“残業していること=エライ”になっている上司がいます。そんな社風の会社は優秀な人材を失っています。“残業している”という表面だけとらえて、それを“頑張っている”と評価するのは非常に危険です。学生から社会人になったばかりの、まだプライベートが大切な新人にとって、上司が休日出勤をしたり、毎日遅くまで残業したりしている姿を見ると、自分もそうなるのかと恐怖しか感じません。会社や上司の当たり前が、新人にとっては疑問に感じることが多々あるのです」
●好ましい行動
「残業している新人がいたら、仕事が多いのか、効率が悪いのかを観察して気にかけてあげてください。『仕事のやり方を工夫してみよう』と言うだけでは、新人は工夫の仕方が分からないため、一緒に考えてアドバイスをしてください。体が慣れるまでは定時に帰すようにするなどの組織全体で対策が必要です。長く勤めることのできる環境を作るのも上司の役目です」
「今ドキの新人は」と言わず、心をフラットにして接する
太田さんは、新人への対応のポイントを次のように話す。
「新人によって、早く成長する人・ゆっくり成長する人、自主性のある人・ない人、向上心のある人・ない人など様々です。『今ドキの新人は』と固定観念を持たずに、心をフラットにして接してください。
そして上司と部下である前に、人間同士ですから、『大切な弟・妹』だと思って親身に新人育成をしてください。会社の未来の中枢を担う新人育成は、上司の重要なお仕事です。人材育成で成果を上げるには、新人との関係の質を高めることが最も重要です」
新人対応に少し戸惑っているなら、ぜひ接し方のヒントにしたい。
【取材協力】
アイキャリア株式会社 代表取締役 太田章代さん
人材育成研修・女性活躍推進研修など、企業や団体で1,400回以上の研修に登壇。【働くを楽しむ】社会つくりに貢献します。著書「引寄せ営業の法則」他
https://i-career.co.jp/
取材・文/石原亜香利