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日本学生支援機構(JASSO)が提供する貸与型奨学金には「第一種」と「第二種」の二種類がある。無利息の「第一種奨学金」とは異なり、支払回数が多く、利息分も支払わなければいけない「第二種奨学金」。この奨学金を繰り上げ返済(操上返還)できる制度があるのは、ご存知だろうか?
この記事では、そんな奨学金の繰り上げ返済のやり方や、そのメリットについて解説していこう。
奨学金の繰り上げ返済(操上返還)とは?
奨学金は住宅ローンと同じようなもので、完済する前に返済額を繰り上げて支払える。しかし、繰り上げ返済をしたからといって、その後の「月々の返済額が少なくなる」わけではない。奨学金の繰り上げ返済は、多く支払った分だけ「支払期間が短縮される」仕組みだ。
奨学金を全額繰り上げ返済(操上返還)はできる?
もちろん、完済する前に奨学金を全額、繰り上げて返済もできる。早い段階で全額繰り上げ返済できれば、利息をかなり減らせるだろう。
奨学金の繰り上げ返済(操上返還)に手数料はかかるの?
奨学金の繰り上げ返済をする際、手数料は一切かからない。しかも、繰り上げ返済自体は何回でも可能だ。ある程度まとめて返せるようになったら、その都度、繰り上げ返済してもOKだ。
奨学金を繰り上げ返済(操上返還)した場合、利息はどうなる?確認と計算方法
奨学金を繰り上げ返済すると当然、その後の利息の額も変わってくる。返還期間と利率がわかっていれば、計算専門のポータルサイト「高精度計算サイト」などで計算できる。ただし、据置期間中の利息は別に加算されるので、実際の金額とは少々異なってくるだろう。
返還期間と利率は、日本学生支援機構で公表されている。
奨学金繰り上げ返済(操上返還)の手続き方法は?
奨学金の繰り上げ返済をする場合、申込み方法が3種類ある。
奨学金繰り上げ返済の申し込み方法1:スカラネット・パーソナル
インターネット上で申し込める。申し込み期間は、繰り上げ返済を希望する月の前月中旬~当月中旬まで。
奨学金繰り上げ返済の申し込み方法2:郵送・FAX
申込書類を下記の住所に送付して申し込める。申込み期間は、繰り上げ返済を希望する月の4か月前~1か月前まで。
■送付先
〒162-8412 東京都新宿区市谷本村町10-7
日本学生支援機構 奨学事務センター
FAX :03-6743-6683
奨学金繰り上げ返済の申し込み方法3:電話
奨学金返還センターに電話をして申し込める。申し込み期間は、繰り上げ返済を希望する月の前月まで。
■電話番号:0570‐666‐301(ナビダイヤル)
月~金8:30~20:00(土日祝日・年末年始を除く)
奨学金を一括返済で請求されるパターンも?
自分から申し込みをしていないのに、奨学金の一括返済を請求されるケースもある。それは、奨学金を9か月以上、滞納してしまったときだ。
まず奨学金を3か月以上滞納すると、個人信用情報機関に「延滞情報」が登録される。そこからさらに滞納が続くと、日本学生支援機構から「一括返済」を請求されてしまうのだ。
返済が厳しい場合は、奨学金返還センターに電話をして、減額返金制度や返還期限猶予制度が使えるか相談すると良いだろう。
奨学金を滞納することで発生する影響に関しては、以下の記事も参考にしたい。
奨学金を滞納したらどうなる?保証人に電話される、住宅ローンが組めないって本当?
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奨学金を繰り上げ返済するメリットとデメリット
それでは、奨学金の繰り上げ返済について具体的なメリットとデメリットを見ていこう。
奨学金を繰り上げ返済(操上返還)するメリットは利息と支払期間の節約
奨学金を繰り上げ返済するメリットは、「繰り上げ返済した分の利息がカットできること」と「支払期間を短縮できること」だ。
奨学金の返済額は「元金」だけではなく、「元金+利息」で構成されている。繰り上げ返済をすると支払期間を短縮できると同時に、元金にかかる利息もカットできるというわけだ。
[例]借入総額480万円、返済期間20年(240回)、返済金利0.5%の場合
■繰り上げ返済なしの場合:支払総額 約505万円(元金480万円+利息 約25万円)、支払回数240回
■支払回数24回目で50万円繰り上げ返済した場合:支払総額 約500万円(元金480万円+利息 約20万円)、支払総回数215回
ざっくりと計算をしただけでも、繰り上げ返済をすると、ここまで利息金額と支払回数が変わってくる。
そして利息が減る割合は、支払いの初期であるほど大きくなる。早めに繰り上げ返済をしたほうが、利息分を大きくカットできるうえ、支払総額も抑えられるのだ。
奨学金を繰り上げ返済(操上返還)するデメリットは家計の悪化
一方、奨学金を繰り上げ返済するデメリットは、家計の現金が減る点。貯蓄が十分にない状態で繰り上げ返済をすると、急病や冠婚葬祭、家電の買い替えなど急な出費が必要な場合に現金が足りなくなるリスクがある。
万一の事態に備えた現金貯蓄を「生活予備費」と言い、おおよそ生活費の半年から1年分を確保しておくのがおすすめだ。
奨学金の繰り上げ返済する場合は、この生活予備費を確保した余剰分を返還に充てるとよいだろう。
奨学金を無利子で借りている場合、繰り上げ返済のメリットはある?
ここまで解説した内容は、利息がつく「第二種奨学金」で繰り上げ返済をした場合の話だ。無利息の第一種奨学金を借りて繰り上げ返済をしても、「利息分がカットできる」メリットはない。しかし、「支払回数を減らす」メリットは、第一種奨学金でも変わらない。
また、第一種・第二種ともに、奨学金は住宅ローンを組む時の「返済負担率」にも影響してくる。住宅ローンを申し込む時に、奨学金を含めたローンの返済残高が「年収の1/3以上」あると、住宅ローンの審査が通過しにくくなってしまうのだ。
これを避けるために繰り上げ返済を利用し、あらかじめ奨学金の返済残高を減らしてから住宅ローンの申し込みをする方法を取るのもアリだ。