医師がすすめるカラダにイイこと!教えてDr倉田
2018年の12月頃に私は、虫歯を患いました。歯科医院を受診せず、治療に難渋した私自身の失敗談と歯科治療の歴史をご紹介します。
虫歯は正式には齲歯(うし)と呼ばれますが、虫歯で統一します。
<陶歯(陶器製)写真:著者撮影、日本大学松戸歯学部歯学史資料室(以下、歯学史資料室)>
医師国家試験で、「歯の問題」は出題されるの??
歯は体の一部分なので、医師は医学部で勉強していると思いませんか?
2014年2月8日~10日の3日間で行われた「第108回医師国家試験」の約500問の中で出題された、歯科領域の問題をご紹介しますので、一緒に考えてみましょう!
G問題15 乳歯について正しいのはどれか。
A, 32本である。
B, 臼歯から生え始める。
C, 5~6歳で生え終わる。
D, 生後6~8か月から生え始める
E, 10歳ころから永久歯に生え替わり始める
乳歯は生後8か月頃から生え始め、3歳で乳歯が完成します。乳歯は合計20本で、臼歯(奥歯)よりも前歯が先行します。永久歯が生え替わり始めるのは6歳頃です。
よって「D」が正答です。
小さなお子さんを育ててらっしゃる方など、一般の方でも答えられる内容だと思います。
実は医学部で学ぶ「歯の領域」は、基本的な構造や解剖、顎など医科治療と関わる部分に留まり、歯の治療内容に関して詳しく学ぶ機会はほとんどありません。
歯科治療の知識量に関しては、医師は一般の方々とあまり変わりがありません。
脳外科から産婦人科までという出題分野が膨大な医師国家試験の中で出題数が1~2問程度の歯科領域問題を勉強し過ぎると他の問題を解く時間が出来なくなります。
<歯科治療器具写真:著者撮影、歯学史資料室>
虫歯菌の凄まじい進撃
虫歯菌の歯への攻撃を城攻めに例えてご説明します。
①城門「エナメル質」を打ち破る!
歯の表面を覆う「エナメル質」は人体で最も硬い素材で、宝石だと「水晶」に相当し、食べ物を噛み切ったり粉砕したりすることに役立ち、進撃する「虫歯菌」の前に城壁のように立ちはだかります。ところが、硬い「エナメル質」も、虫歯菌が出す「酸」には文字通り歯が立たず、溶かされ「虫歯菌」が歯内部に侵入します。
②拠点「象牙細管」を占拠し進撃する!
「エナメル質」を破壊した「虫歯菌」の次なる目標は「象牙質」。「虫歯菌」は「象牙質」に侵攻する部隊と内側から「エナメル質」を攻撃する部隊に分かれ、進撃を続けます。「象牙質」にある象牙細管という管を「虫歯菌」が占拠し、住処にします。
「虫歯菌」部隊には援軍も加わり数も増え、象牙細管を全体に広がる「平等性拡張」や多層階住宅の様に広がる「念珠(数珠)状拡張」で破壊します。
こうして歯という城は落城(破壊)され、「虫歯」が完成されます。
日本では、永久歯28本(7本×4=28本<親知らず(智歯)4本除く>)のうち20本あると食べ物をきちんと食べられることから、「80歳で20本の歯を残す(8020運動)」が厚生労働省を中心に進められてきました。開始された1975年には10%以下だった達成率が2017年には51.2%まで上昇していて、歯科治療が貢献を果たしています。