「虫歯の治療」と聞いて真っ先にイメージするのは、耳障りな音を立てる歯科用のドリルではないだろうか。それほど、「虫歯を治す」=「歯を削る」という観念が、われわれには染みついている。
しかし、歯を削っても、そこからまた虫歯ができるなど、従来の削る治療法には限界があり、昨今は削らないで治す手法に注目が集まっている。
そうした治療を以前から実践している歯科医院の一つが、虎ノ門駅そばの天野歯科医院だ。
今注目の歯を削らない虫歯治療
虫歯は、進行度によってC0~C4の4段階に分けられる。比較的軽度のC0やC1はもちろん、軽い痛みがあるC2でも歯は削らず、普通なら神経を抜くようなズキズキと痛む事もある深い虫歯のC3でもできるだけ削らない、神経を抜かないというのが同医院の方針。
同医院の天野聖志院長は、著書の『歯を削らない、抜かない、だから痛くない、むし歯・歯周病の治し方』(現代書林)の中で、削らない治療法として「ヒールオゾン治療」、「カリソルブ治療」などを紹介し、各治療法の解説をしている。
こうした治療法は、「虫歯は削るもの」と思っていたわれわれには馴染みのないものだが、具体的にどのような方法なのだろうか。健康診断で「虫歯がある」と言われた筆者が同医院を訪れ、治療を受けてみた。
歯の詰め物が取れて虫歯に
受付で問診票に記入したのち、最初に行われたのがレントゲン撮影。歯のレントゲン写真をもとに、天野院長が、筆者の歯の現状について説明を始める。
「右上の一番奥の歯が、昔入れた詰め物が取れてそのままになっていますね。そこがC2の虫歯になっています。そして、隣の歯も軽いC1の虫歯になっています。普通の人は、噛みしめた時に前歯の上側の歯が下側の歯を覆うのですが、鈴木さんはそうはなっていないため、前歯で受ける力が全部奥歯にかかり、詰め物が取れ、虫歯にかかりやすい状態になっていたのです」
詰め物が取れたという記憶は、まったくない。食べているときに取れて、そのまま一緒に飲み込んでしまったのだろうか。保健所で受けた健康診断では、「虫歯が何か所かある」と言われて、4~5か所は虫歯があると覚悟していたが、今回の精密検査で2か所だけ、それもC3まで進行していなかったのは、ちょっとした安心材料だ。
C1の虫歯ならヒールオゾン治療で治る
天野院長は、治療方針について次のように話した。まず、C1の虫歯について。
「C1の虫歯についてはヒールオゾン治療で大丈夫です。他にC1の虫歯はなく、あとは初期虫歯以前のC0が若干あるだけです」
ヒールオゾン治療とは、ヨーロッパやカナダで盛んな歯科治療で、殺菌効果が高いが人体には悪影響のない医療用オゾンガスを用いる。虫歯菌は99%殺菌し、進行度がC1の初期虫歯に対しては、ほぼこれで対応できるという。また、ヒールオゾンは歯を強くし、虫歯の予防にもなるという。副作用はない。
一般的な歯科医だと、C1の虫歯でも患部を削る処置がとられることが多いが、ヒールオゾン治療には、その必要はない。
ところで、天野歯科医院のヒールオゾン治療には、歯1本単位で処置するか、全部の歯を一度に処置するかの選択肢がある。費用は税抜きで、それぞれ1万円と3万円。
「コストパフォーマンスを考えると、全部の歯をヒールオゾンで処置するほうを選ばれる患者さんが多いです」と天野院長。
おっしゃるとおりで、親知らずを抜いたにしても30本近くある歯の中で、C1の虫歯が1~2本しかなく、他は完璧に健康な歯の人なら歯1本単位で処置したほうが安上がりになる。筆者のように、他にC0の歯が幾つかあり、予防も考慮するなら全部の歯を処置したほうがいい。ほとんど迷うことなく、全部の歯のヒールオゾン治療を希望した。