「地方創生」という言葉ができて久しいが、大都市圏に住む人の大半にとって、地方は観光旅行先というイメージが先行する。そのため、観光資源が乏しいと見られている地域は、あまり注目されず、旅行者も少ないまま、さびれているところが多い。
その現状に風穴を開けようとする事業が幾つか登場しているが、その1つが今回紹介する「おてつたび」。
新しい形のマッチングサービス
「おてつたび」を一言で説明するなら、「都会の若者と地方の宿泊施設のマッチングサービス」。都会の若者(学生)は、見知らぬ地域に旅費を負担することなく訪れることができ、受入先の地方の宿泊施設は、彼らに仕事を手伝ってもらい、口コミで地域の魅力を広めてもらう。こうした交流を増やすことで、地域の活性化に結び付けようという取り組みだ。
実例を交えた「おてつたび」の紹介動画
「おてつたび」のシステムは、公式サイトに掲載の宿泊施設から、行ってみたいところを探し、決まったら希望滞在期間とともに氏名・電話番号など基本情報を送信。後日、運営会社の(株)おてつたびの担当者とオンライン面談を経て、宿泊先と事前に委細をやりとりしたうえで、当地へ出発するかたちになる。
往復交通費、宿泊費、食費は宿泊先が負担する。一方、滞在者はそこの業務をサポートする。滞在者は、「おてつたび」がなかったら一生行かなかったかもしれない地域の隠れた魅力を発見し、知人への口コミやSNSなどを通じてそれを発信する。その地域のファンを増やし、地域の魅力をもっと外部に広める仕掛けづくりが、本サービスのねらいになっている。
地域や宿泊施設の魅力発信なら、既に各施設の公式サイトで行われていることだが、「おてつたび」が目指すのは、「よそ者だからこそわかる魅力」の発掘。おてつたび社の代表取締役CEOの永岡里菜さんは、「この旅館で生けている花は、女将さんが毎朝近くの山に行って採ってきたもの」といった、情報の発信側では当たり前と思ってアピールしていないことでも、外部の人には魅力に映るものが多々ある点を指摘。異なる視点から、その地域のファンが増えてくれることを、期待しているという。