酒はリラックスするだけが能じゃなかった新事実!
なんというかヒリヒリするような緊張感があることはあるのだか、その緊張感の中で酒を一口呑むと、呑んだ瞬間、ものすごくリラックスするんですよね。緊張と緩和ってヤツですよ。本当に一瞬なんですけど。
緊張感の中での一瞬のリラックス。それはなんだか砂漠の中でオアシスを見つけたような、とはいえ刹那に消える、なんともいえない瞬間の快感なんですよ。
緊張感…緊張感…緊張感…緊張感…緊張感…『快感!』…緊張感…緊張感…緊張感……。
緊張があればあるほど、この『快感!』がひときわ快感として光り輝いてくる!
そしてその輝く快感を求めて、今までは、
“緊…緊…緊…緊…『快!』…緊…緊…緊…緊…『快!』…緊…緊…”
というリズムだったのを、
“緊…緊…『快!』…緊…緊…『快!』…緊…緊…『快!』…緊……”
というリズムにすべく、どんどん呑むピッチが上がってくる。
これはお酒の新しい味わい!! こうなってくると、もはや緊張感が新しい酒の肴だ!!
チューハイの2本目を冷蔵庫まで取りにいき、女将の前に差し出す。
「200円…」
無愛想は変わらない。いいぞいいぞ!
よく見りゃ女将の後ろの棚には、ウインナーの缶詰みたいなちょっと高いツマミが置いてあったが、よかったよ、なんな高価なの買わないで。あんなの買ってヘタに愛想よくされたんしゃ、この緊張と緩和飲みは体感できないもん。そう思ってわずか50円の『ポテトフライ カルビ焼の味』をポリポリ食べる。
そのポリポリという音もまた静かな店内に響く緊張。まだポテトフライの塩分が残っている口中に、チューハイを流し込んだ瞬間に生まれる快感!
この年になって今まで知らない酒の味わい方を知った想いである。この店の前に入った銭湯のサウナも素晴らしかったんで、この銭湯サウナ→緊張角打ちのコースは今後もありだなァ〜と思い、満足しながら店を出た。すると店内に傘を忘れてきたことに気付いて、すぐに取りに戻る。
「すいません、傘忘れまして…」
「あ、これね、これ。また来てね」
女将さん、なぜか急に愛想がよくなってた。もしや、一回店を出て2回目の入店だったんで、もう常連的な感じにオレを思ってくれたのか? いや〜もうちょっと愛想悪くしてよ〜。複雑な気持ちではある。
文/カーツさとう
コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。