そしてその時、時間は止まった!!
業務用冷蔵庫の中には缶のビールやチューハイ。そこから缶チューハイを取り出し、レジの前に置く。
「200円…」
単刀直入に価格のみをいう女将。まぁようするにあんまり愛想はよくない。
レジ台の女将さんの目の前には、柿の種だのサラダ煎餅だの、ちょっと駄菓子っぽいツマミもおかれている。これはちょっと愛想のよくない女将さんの気を引かなきゃまずいなァ〜と、その駄菓子の中から『ポテトフライ カルビ焼の味』なる商品を選び「コレもォ」なんつうと、返ってきた言葉は、
「それは50円…」
価格のみの発声システムはそれでもかわらない。まぁこんなこともあるわなと、総額250円を支払い、テーブル前に一歩だけ動くと、ちょうどその時に、スーツ姿の先客が帰っていった。
狭い店内には愛想のよくない女将とオレの二人きり。店の中にはテレビがあるワケでもなく、まったくといってもいい無音状態。壁に掛けられた時計の秒針の「カチカチ」という音だけが響く、やけに緊張感のある空気が一体を支配していた。
缶チューハイのプルトップを開ければ、その「プシュ〜」っつう音がひときわ大きく聴こえる。
ま、リラックスしようとチューハイを一口呑む。緊張感のある空気を打破しようと、あえていつもより大きめの声で、
「プハーッ!」
なんていってみる。
なんもかわらない。むしろその声は虚しく響いた。とはいえ、サウナ上がりの乾いた体にチューハイはたまらなくうまく、2口目には思わず、
「あ〜うまっ」
という声までだしていた。
それでも空気の緊張感はまったく変わらない。
完全に時が止まったような状態。女将はオレが陣取るテーブルの方に向かって座っているので、なにやら観察さているような気すらする。
しかし、この緊張感がヤケに酒の旨さを倍増させてくれたのだ。というのも…。