実践編~父親の子どもとの関わり方
父親役割を踏まえた上で、具体的に父親が子どもと関わる上でやるべきことはどんなことか。二川さんは次のようにアドバイスする。
1.「世話をする」ことにも重点を置く
「父親はこれまでは、どちらかといえば、一緒に『遊ぶ』要素が強かったところがあります。もちろん遊びながらルールを守らせることで、社会の規範や約束事を教えるといった大切な役割もあります。しかし、これからは、『おむつを替える』『お風呂に入れる』『食事を作る』『宿題をみる』といった『世話をする』要素にも重点を置くべきだと考えます」
2.育児に伴う家事も行う
「育児に伴う家事労働も、父親役割と考えるべきでしょう。子どものおむつや衣服の洗濯と整理、子どもの布団の片づけなどのルーティンワークも母親とシェアすることが求められます」
3.子どもの成長のプロセスを楽しむ
「育児は手伝うものではなく、共に子どもを育てる行為。子育ては、子どもの教育だけでなく『親になる』という自分自身の成長でもあります。人間的な生き方を創造する営みとしてのプロセスを楽しむことが肝要です。
例えば赤ちゃんのうちに、親からかわいがられて育てられた子どもは、基本的信頼感が構築され、大きくなって困ったときには他者を頼ることができたり、他者を思いやることができたりするようになります。他方、応答的なアタッチメントがなされずに育った子どもは、無気力になったり身勝手になったりします」
4.能動的かつ妻の育児不安を和らげる
「子どもとの接触時間を長くすると共に、その内容についても考慮が必要。一緒に寝ることやお風呂に入ることだけでなく、子どもに仕事を教えたり、趣味を一緒にしたりというような能動的な関わりが求められます。単にイクメンであればよいというのではなく、妻の育児不安を和らげるように子育てに関わり、その方針については妻とよく話し合い、責任を持って関わってほしいです」
5.叱る厳しさも時には必要
「心理学者の河合隼雄氏は、母性原理を『包む』原理として、やさしさ・受容・保護とし、父性原理を『切る』原理として、きびしさ・規律・鍛練としています。ここぞというときに叱ってくれる厳しさも、時に必要ということも覚えておいてください」
2つの役割を意識する
今回、母親と父親の役割がそれぞれ述べられたが、現代社会においては、その役割を分けずにむしろ「解体」することが必要だという。
「母親、父親それぞれの役割分担というよりも、現代においては、役割分担の解体が望まれます。母親、父親問わず、子どもに対して『無条件に包み込み、受容する役割』と、『依存から自律・自立へと導くために規範意識を身につけさせる役割』の両者が必要であることを意識すると良いでしょう」
【取材協力】
二川早苗さん
筑波大学博士特別研究員、家庭教育支援協会理事長、日本家庭教育学会副理事長
筑波大学大学院哲学・思想専攻博士課程修了。博士(文学)。専門は倫理学、ケア論、家庭教育論。
家庭教育支援協会
http://kateikyouiku.com/index.html
取材・文/石原亜香利