暗号資産を使わないブロックチェーン
視点を変えてプライベートチェーンの話をしましょう。参加者が限定されるプライベートチェーンでは、暗号資産が入手できるなどの経済的なインセンティブは必須ではありません。代表例のひとつが「Hyperledger Fabric」です。Hyperledger Fabricは、Linux Foundationにより立ち上げられたオープンソースプロジェクトで、企業ユースに耐えうる信頼性を備えたブロックチェーンプラットフォームです。Hyperledger Fabricでは取引保証にマイニングや計算リソースは不要で、暗号資産が介在することなく運用可能なシステムとなっています。ネットワーク参加は許可制で、取引はプライベートのみとパブリックのどちらにも対応可能です。チェーンコードというアプリケーションレベルのスマートコントラクト機能(言語はGolangとJava)もあります。
Hyperledger Fabric(https://hyperledger-fabric.readthedocs.io/en/release-1.4/)
「A Blockchain Platform for the Enterprise」を標榜するHyperledger Fabricは、IBMや富士通、日立製作所といった企業も取り組みを進めています。
今後のブロックチェーンはどうなる?
暗号資産に目を向けてしまうと、暗号資産取引所のアンチ・マネーローンダリング対応強化などネガティブなキーワードが飛び交っています。一方ブロックチェーン技術に注目すれば、ビジネスでの利用可能性は計り知れえません。その証拠の一つが「新技術等社会実装推進(規制のサンドボックス制度)」です。この制度は革新的な技術やビジネスモデルを活用した事業を早期に実用化することを目的としたもので、期間や参加者を限定するなどして、既存の規制を受けることなく新技術の実証を行なえるものです。ブロックチェーン・金融分野での第1号認定は、株式会社Crypto Garageが取得。実証実験では、Blockstream社が提供するサイドチェーン決済ネットワーク『Liquid Network』上を利用し、ビットコインに裏付けされたトークンと交換可能な円建てトークンを発行できるサービスを提供するとしています。
このような制度や様々な実証実験を通じ、誰も想像しえなかったブロックチェーンのサービス登場に期待しましょう。
新技術等社会実装推進チームでの認証プロジェクト一覧
引用元:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/regulatorysandbox.html
取材・文/久我吉史
現役の金融ビジネスパーソンでもある金融ライター。