そんなサクシードHVの走行性能は、「一般ユーザーでもけっこう使える」というものだった。今時、プッシュスタートではなく、キーをグルリと回してエンジン(HVシステム)をスタートさせるのはめずらしいが、出足はアクア同様、静かで滑らかなモーター走行。エンジンが始動しても、ノイズが不当に高まることなく、けっこうなペースを維持することができる。例えば、首都高の流れをリードするぐらい、お手のものである。
モータートルクのアドオンによる加速フィールは、ほかのトヨタHV同様、なかなか気持ちがいいものだ。
乗り心地にしても、良路なら、下手なコンパクトカーよりいいぐらいで(くり返すが、シートのかけ心地は乗用車的)、首都高のカーブに不安なく飛び込むことができたほどだった。ただし、商用車用サスペンションゆえ、キツい段差の乗り超えでは、直接的なショックが、一瞬ながら、避けられないのも事実。
が、最終的にびっくりさせられたのは、けっこうまともな乗用車的走行性能や、ペットの乗車にも適するラゲッジスペースの広さ、積載性能だけではなかった。そう、トヨタHVならではの燃費性能に、である。都心部の一般道~首都高~郊外の一般道を流したときの実燃費は、写真にあるように、なんと23・1km/L!を記録。ひんぱんにモーターだけのEV走行モードに入るのがポイントだろう。
サクシードTXグレードの価格はガソリン車で169.56万円、HVで196.56万円と、27万円の差になり、ガソリン代で元を取るにはよっぽど走る必要はあるものの、日ごろの燃費の良さは経済的だけでなく、精神的にもよろしい。特にホビーユースとして使うなら、長距離走行も苦にならないHVモデルの優位性が際立つ(というほど飛び抜けた性能ではないが)。
写真のシルバーマイカメタリックはいかにも商用車的だが、ボルドーやライトグリーン、ダークブルー、いっそブラックのボディーカラーを選び、ちょっぴりドレスアップすれば、使い倒してナンボの、ホビーユースにぴったりな大容量ワゴンになりうるだろう。もちろん、昼間の歩行者対応の自動ブレーキなどを含むトヨタセーフティセンスも標準装備されるのだ。
今やタクシーだってジャパンタクシーのようにHVが当たり前の時代になりつつある。働くクルマのHVが遅れてやっと加わった、そんな印象を受けたのも本当である。
尚、写真のサクシードTXには、カラードバンパー1万6200円、運転席シートヒーター8100円、アクセサリーコンセントAC100V 100W 1万1880円、T-ConnectナビゲーションDCMパッケージ19万1700円、ルームミラー内バックモニター4万3200円などが付いていた。
トヨタ・サクシード
https://toyota.jp/succeed/
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。