■連載/ゴン川野のPC Audio Lab
スピーカーキットの定番と言えば、バックロードホーンである。フルレンジ一発で38cmウーハーに負けない超低音をズバッと出す。しかし、このフルレンジというのが曲者である。現代のスピーカーは小型モデルでも、ほとんどがツイーターとウーハーの2Way構成を採用している。なぜならスピーカーの振動板は大きい程、低い音が再生でき、小さい程、高い音が再生できるからだ。適所適材にするなら、高音用と低音用を分けるのが得策だ。フルレンジは大口径になるほど、低音が出せるが、高音が苦しくなる。その限界が20cmである。つまりバックロードの終着点は、長岡鉄男氏が設計した20cmフルレンジを二発使った「D-77」だろう。それが無理なら、20cm一発の「D-55」か。
『D-77』に使うユニットFOSTEX『FE-208S』は販売終了で、後継機の『FE208-Sol』も限定モデルで完売している。そこで注目したいのが20cmではなく、16cmの新製品『FE168NS』なのだ。なぜなら、16cmならエンクロージャー横幅が20cmに比べて、ややスリムになり、低域の再生限界は、そんなに違わないからである。さらに、BearHornからエンクロージャーキット『ASB168NS』が発売予定なので、板材のカットに悩まされることなくサクサク組み立てられるのだ。サイズは高さ90cm、奥行き45cm、幅25cmの堂々たるフロア型である。板材にはミゾとダボ穴があり、工具を使わなくても精度と密閉度の高いバックロードが完成する仕組みになっている。
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片chで合計23枚の板材を組み立てるキット。大物なので接着後の重石にも、大物を使ってしっかり圧着させたい。重石は必要不可欠だがハタガネはなくても完成できる。別途用意したFOSTEX『FE168NS』は高域の指向性を改善するためにダブルコーンを採用。アルミダイキャストフレームを使った贅沢なフルレンジユニットである。
『FE168NS』は2個ペアで重さ4.56kgもある立派なユニット。マグネットはフェライトでφ120mm、ポール部には銅キャップをかぶせて電流歪みを低減させているという。
アルミダイキャストのフレームは肉抜きがされているが、強度と剛性は充分ありそう。入力端子は金メッキ仕様だ。
『ASB168NS』は23枚の板材と吸音材、スピーカー端子、リード線のセット。組み立てには木工用ボンド、重石、ドライバー、金槌が必要になる。
スピーカー端子は背板から一段、下がった位置にあるので取り付け用の板を木ネジと接着剤で裏側から固定する。
音道を作るための板材は水平を保ち強度を上げるために側面にミゾを掘って接合する大入れつぎと呼ばれる技法を採用。ミゾがあるので容易に接着できる。
板材によってはダボつぎとミゾを組み合わせた接合もあり、さらに確実に接着できる。
ダボつぎとは丸いダボ穴に圧縮して作られたダボと呼ばれる丸棒を打ち込んで接合する方法で正確な位置決めと強い結合が得られる。
大型の板材もミゾとダボのおかげで専用工具を使わなくても正確に組み上げられる。
音道が開口部に向かってだんだん太くなっていく構造であることが分かる。つまりエクスポネンシャルホーンが採用されているのだ。