進む清涼飲料水メーカーのCSR事業
現在、ペットボトルのリサイクルについては、国内清涼飲料水メーカーもCSR事業の一環として取り組んでいる。どんなことに取り組んでいるのか、概要を見ておこう。
●サントリー
出典:サントリー食品インターナショナル「国内清涼飲料事業における使用済みペットボトルの有効利用を目指した取り組みについて」
サントリーグループは、これまで容器素材の軽量化、薄肉化のために国産最軽量のペットボトルや国産最薄の商品ラベル、植物由来原料のペットボトル導入などを行ってきた。これは「2R+B」のReduce(使う量を減らす)、Recycle(再資源化して使う)、Bio(植物由来の資源を使う)に基づくもの。
また使用済みペットボトルの新しいペットボトルへのリサイクルとして、2011年には協栄産業株式会社と共同で「メカニカルリサイクルシステム」を日本で初めて開発、積極使用している。技術についても環境負荷低減と再生効率化を実現するものを開発、始動させている。
●コカ・コーラ
コカ・コーラ社は、以前からペットボトル関連の環境への取り組みを実施していた。そんな中、2018年1月にザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)が、環境の新たなグローバルプランとして、2030年までにコカ・コーラシステムの製品の販売量に相当する缶・PET容器をすべて回収・リサイクルし、廃棄物のない世界を目指すことを発表。
これを受け、日本コカ・コーラは2030年までにペットボトルに石油由来の原材料を使用しないことなどのほか、より着実な容器回収・リサイクルスキームの構築とその維持に取り組むこと、そして清掃活動を通じて容器ゴミ、海洋ゴミに関する啓発活動に積極的に参画することなどを目標に掲げた。
参照:日本コカ・コーラ株式会社「廃棄物ゼロ社会を目指して ~担当者が語る「容器の2030年ビジョン」実現に向けた取り組み~」
リサイクル手法にも種類があり選ぶ必要性
世界的に、そして日本でも高まるプラスチック類のリサイクルへの関心を受け、そのリサイクルの仕組みも少し知っておく必要もありそうだ。
例えば、単にリサイクルといっても、その方法は一通りではない。プラスチック類のリサイクルを的確に行うには適切な「手法」を選ぶ必要があると、プラスチック循環利用協会の総務広報部の担当者は話す。
「リサイクル率が高まることについて反対する人はあまりいないかと思いますが、コストや環境への負荷を考慮しないで、特定の手法でリサイクルを押し進めてしまうことは問題があると思います。リサイクル手法としては、『マテリアルリサイクル』『ケミカルリサイクル』『サーマルリサイクル(エネルギーリカバリー)』がありますが、いずれによるかははよく考えなければなりません」
それぞれ、どんなリサイクル方法なのか知っておこう。
●マテリアルリサイクル
再商品化・製品利用のリサイクルのこと。マテリアル(物)からマテリアル(物)へのリサイクルだ。良質の再生樹脂を作るには、同一種類の樹脂、例えばPPはPP、PETはPETに分別し、また、色物、古いもの、汚れたものは極力避ける必要があるという。
●ケミカルリサイクル
化学的再生法。プラスチックを分子、原子レベルまで分解して再合成する、あるいは化学反応の材料とするリサイクル方法。原則分別、洗浄が不要で、リサイクルとしては理想的といえるが、エネルギーを多く使うこと、大型装置が必要となることなどがネックとなるという。またある程度の量の廃プラスチックを定常的に確保する必要もある。
●サーマルリサイクル(エネルギーリカバリー)
プラスチックを燃やすことで生じるエネルギーを利用するというもの。
「サーマルリサイクルは、“燃やしておしまい”ということから、欧米ではリサイクルではないとされています。それはそれとして日本のプラスチックは現状石油(原油)由来のものなので、エネルギー源として使うことは、ガソリンや灯油、軽油、重油を燃やしてエネルギーを取り出すことと変わりはありません。コストや環境負荷の観点からマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルに向かないものは、エネルギー源として少しでも有効活用すべきと思っています」(プラスチック循環利用協会担当者)
詳細は「プラスチックリサイクルの基礎知識」へ
世界的、そして日本での環境問題、リサイクルへの動きを受け、ペットボトルをはじめとしたプラスチック類について、さらに知識を深め、しかるべき行動につなげていきたい。
【取材協力】
日本容器包装リサイクル協会
https://www.jcpra.or.jp/
プラスチック循環利用協会
https://www.pwmi.or.jp/
取材・文/石原亜香利