2017年全国の警察に寄せられた、配偶者からのDVの相談等件数は、過去最高の72,455件。DV防止法が施行された2001年と比較すると、約20倍にも伸張している。警察に相談をしていない場合や、交際中の恋人同士の間で起こる「デートDV」を合わせるとその数はさらに増加する。
なぜDV被害は増えるのか。DVをする人の特徴やDVを受けやすい人の特徴は。DV被害者としての経験を持ち、DVや対人関係などに悩む女性をサポートする心理カウンセラー愛乃ここみさんに話を聞いた。
精神的に未発達の大人たち
人間関係トラブルの大きな原因の一つは、幼少期に家族との”情緒的な絆”を持てなかったことにあります。家庭内に対立や不法行為、身体的・心理的虐待、性的虐待、ネグレクト等が恒常的に存在する「機能不全家族」が増えた昨今、精神的に子供のまま、身体だけが大人になってしまった成人が世の中には沢山いるんです。虐待という言葉だけをみると、「うちには関係ない」と感じる方も多いかもしれませんが、こんな経験はないでしょうか。
・両親共に仕事で忙しく、母親と関わる時間が少なく甘えられなかった
・将来不自由な生活を送らないようにと、強制的に勉強させられた
・「親のいうことが聞けないのか、お前はダメなヤツだ」などと否定的な言葉で叱られた
・不安な気持ちを感じたり、親を求めたときに「今は忙しい、いい子にしていて」などという言葉で片付け、いつも感情に寄り添ってもらえなかった
これらは、ごく普通の家庭にも起こりえます。大人にとっては、大したことがない些細なことでも、発達途上の子供の脳は萎縮したり、心が傷ついたりします。
暴力や暴言が日常的なコミュニケーション方法
DVを起こしてしまう人は、幼少期にある経験をしているケースが多いです。例えば、親からの暴力や暴言。これはしつけという名目で行なわれている場合もあります。他には、両親が喧嘩ばかりしている姿を見る面前DVです。暴力や暴言が、人とのコミュニケーション方法として学習している場合があります。
このような経験の中で子供は、「自分の思うように親から愛されない」「生きている価値はあるのか」などと感じ続けると、他人に愛情を求めるのを諦めるようになります。そして、自分を好きだと言ってくれる人(弱い立場)に対して、支配、服従させることにより、「自分は正しい、強い存在=価値のある存在」と、快感を感じるようになります。それは、本当の愛情を感じることができない彼らにとっては愛情の代わりであり、生きていくために必要な自分を保つ術なってしまうのです。
DVをする男性の特徴
・プライドが高く、「自分は完璧だ」と思っている
・暴力や暴言を吐いている自覚がない
・外では本音を言わず、他人に嫌われないように生活しているため、暴力や暴言を吐くように見られない
・他人を信用しない。本音を言える友人がいない
・自分の気持ちを言語化したり、表現することが苦手
・自分の決めたルールに厳しい
・すべて「相手のせいだ」と思っているので、クレーマーなどになりやすい
・嫉妬深く、彼女(妻)が友人や家族に会うことを嫌がる