■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ
ホンダの新型「インサイト」が3代目として再々登場した。初代は2ドアクーペ、2代目は4ドアハッチバック、そして今回は4ドアセダンの姿として登場した。歴代「インサイト」を比べると、ボディタイプはバラバラだが「インサイト」に共通しているのは、ハイブリッドのパワートレインを採用しているところだ。3代目に搭載されているのは、現在のホンダの主力となっているハイブリッドシステム「i-MMD」方式のもの。
i-MMDは駆動用と発電用の2つのモーターマガジンとエンジンを組み合わせている。エンジンは最高出力109psと最大トルク13.7kgmを発生する1.5L、4気筒で、駆動用モーターは最高出力131psと最大トルク27.2kgmを発生する。ノーマル、エコ、スポーツ、EVと走行モードは4つ備わっている。ノーマルで横浜の一般道と首都高速に乗り入れてみた。
停止からの発進、発進してから50km/hを超えるぐらいまで、ほぼモーターだけで走る。回転を上げないと力が出てこないエンジンと違って、発進時から最大のトルクを発揮するモーターの加速は力強く、滑らかで静かだ。
機械として優れているか?★★★★★ 5.0(★5つが満点)
i-MMDのコンセプトは、モーターのその特性を最大限に活用しようというもので、インサイトでは実を結んでいる。首都高速道路に入り、ペースを60km/h以上に上げていく。登り勾配もあるから、より深くアクセルペダルを踏んでいくと、ようやくといった感じでエンジンが回転し始める。
モーターだけで走ることもあれば、エンジンは発電だけで使われる時や駆動にも使われる時もあって、それぞれ状況によって切り替わっていく。切り替わる様子は、メーター内のパワーインジケーターを見ない限りわからない。わかったところで意味もないのだが。
2代目「インサイト」は逆の特性で、ほとんどつねにエンジンが回っていたと記憶している。新型「インサイト」というか、i-MMDはモーターでの走行期間をなるべく長く取るのが特徴だ。そのことのユーザーにとってのメリットは、前述した通り、力強い発進と滑らかで静かな走行だろう。もちろん、燃費にも有利だ。落ち着いた4ドアセダンのインサイトにとても良くマッチしている。静かでスムーズだから、タイヤが路面と擦れるノイズの方がかえって目立ってしまい、気になってしまったほどだ。
乗り心地も硬くもなく柔らか過ぎず、中庸を心得た快適なもの。ただ、時々、首都高速の舗装のつなぎ目などを越える際に硬めの反応を感じることもあった。首都高速でペースを上げても加速に不満はなかった。アクセルペダルの踏み込み加減に忠実に、レスポンス良く走る。
新しい「インサイト」は、電気のチカラを最大限活用し、それでいてエンジンを発電にも駆動にも用いる、EV(電気自動車)に近い感じの新しいタイプのハイブリッド車だ。走行感覚や性能などで特に気に掛かるところはなかった。走りっぷりは、ホンダの開発陣の狙い通りに仕上がっていると言えるだろう。