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平成の30年間でオフィスファッションや会社の制服はどう変わったか?

2019.02.15

平成30年の間に、様々なファッション文化の流行り廃りがあった。それと呼応するかのように、「オフィスファッション」と「企業の制服」も変遷・進化を遂げてきたことは言うまでもない。

そこで今回、平成時代における「オフィスファッション」を現代ファッションを専門とする共立女子短期大学の渡辺明日香教授が、「企業の制服」を日本の制服に詳しい桑沢デザイン研究所 ファッションドローイング講師・渡辺直樹氏がそれぞれ論じているコラムを紹介していきたい。

バブル期のオフィスファッション:時代を表す派手なデザイン

湾岸戦争・バブル経済崩壊・オウム事件や阪神大震災などが続く混迷期。ポケベル・携帯・インターネットなどの情報ツールが発達し、雑誌やブランドが提示するファッションだけでなく、街から発信されるファッションに注目が集まった。

渋カジ以降、カジュアル化が進み、若者もファッションを楽しむという風潮も一般化。ワンレン・ボディコン・オーバーサイズでルーズなシルエットのソフトスーツ・DCブランドなど、バブル時代のファッションに代わり、平成のスタートは、カジュアルファッションのスタートでもあった。

1980年代末に登場した、渋谷に集う高校・大学生の間で多様な着こなしを表現する「渋カジ(渋谷カジュアル)」を端緒とし、1990年代には、ファッションのカジュアル化とともに、「ギャル系」「裏原系」「ストリート系」など、さまざまなスタイルが加速度的に展開。

オフィスファッションでは、肩が大きいダブルのソフトスーツや、ボディコンシャスなシルエットのワンピースなど、1980年代半ばのバブル期に流行したスタイルが支持を集めたが、バブル崩壊以降、カジュアルファッションの広まりと並行するように、オフィスの装いにもカジュアル化が波及。女性の茶髪の流行、男性のロン毛ブームなどの影響を受けて、職場でのヘアスタイルにも少しずつ変化がみられた。

就職氷河期のオフィスファッション:カジュアル化、制服着用の減少が顕著に

平成の半ば頃(2000年頃)には、失業率の上昇や就職氷河期の影響もあり、この頃のファッションは、カジュアル全盛の1990年代に代わり、コンサバ・セレブ・トラッドなファッションが話題となった。

全体的に、エレガントでフェミニン、上品なイメージのファッションが台頭。若者の間では、パンクやモード系などのアヴァンギャルドなスタイルも支持される傾向に。

また、携帯やスマートフォン・インターネットなど、新しい情報ツールが身近な存在となり、ファッションの参考にする先が多様になった結果、読者モデルやブロガーなど、新しいファッションを作る人たちの幅も広がった。

さらに、タレントやモデル、販売員やサロンのスタイリスト、編集者など、カリスマ・セレブと呼ばれる人なども生まれ、ファッションアイコンが多様化し始めたのもこの頃から。オフィスファッションでは、カジュアルフライデーやクールビズの促進など、行政や企業も働きやすい服装で勤務することが推奨されている。

女性では、2007年の男女雇用機会均等法改正のタイミングで、女性社員の事務服を廃止する企業が相次いだ。その結果、女性では、セットアップのカーディガンにスカート、足元は生足やミュールサンダルのスタイルがみられた。

男性では、スーツにネクタイ着用以外の、ジャケットとパンツの組み合わせなどが一般化。ディオール・オムが提唱したスリムなスタイルやお兄系ファッションなどの影響を受けて、男性のスタイルも細身のシルエットになった。

つま先の尖ったビジネスシューズが登場するなど、一般のファッショントレンドが時間差で、ややマイルドな形でオフィスファッションに波及する動きが広まった。

人生100年時代のオフィスファッション:私服化が進む

2008年の世界同時不況を背景に、ファストファッションが全盛となり、「すぐ買ってすぐ着る」が定着。

他方、地球環境・労働環境保全への意識からエコバッグ・リサイクル・エシカルなファションへの注目も高まる。

SNSの登場により、ファッション情報の波及方法が激変。ブランドイメージや雑誌の系統、人気のあるファッションリーダーなど、90年代までのジャンル分けされたコンテンツの影響力が低下、自分のフィルターを通してものを見る、選ぶ、買うようになった。

また、トレンドに対する疲弊(買って着れば被る問題)も生まれ、「流行のものを着ること=ファッション(おしゃれ)」ではなく、個人が主体的に装いを選択する方向にシフト。

オフィスファッションでは、働き方の多様化、転職が当たり前になりつつあることなどから、会社の装いにおける規範や、その会社ならではのカラーは少しずつ希薄に。

アップル社創始者のスティーブ・ジョブズやFacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグなどがパーカやデニム等のカジュアルスタイルを徹底している影響や、ITやベンチャー系の企業を中心に、ラフなビジネス・スタイルが浸透していることで、カジュアルなオフィスファッションは定着しつつある。

男性では、ジャケットにジーンズを合わせたデニム通勤、スーツにスニーカーやリュックの組み合わせも珍しくなくなった。

女性では、ライダースジャケットやロングカーディガン・ガウチョパンツなど、トレンドのアイテムを上手に仕事服に加えたコーディネートも広まっている。総じて、オフィスでの装いと、休日に外出するときの装いに大きな差はなくなった。

<総括>これからは、「どこで・どんな仕事をするか」がオフィスファッション選びの基準の一つに。

平成30年間を通して、ファッションにはカジュアル化という大きな変化があった。また、ファストファッションの台頭により、トレンドのアイテムが瞬時に広まる流れも一般化したことで、ブランド信仰ではなく、コーディネートや全体のバランス感がファッションの重要なポイントとなった。

オフィスファッションにおいても、この30年間で変化したといえる。景気の悪化や非正規雇用の増加による大手企業の制服廃止や、働き方そのものが変化したことで、オフィスにおけるファッションはより多様になり、ルールもカジュアルに変化した。

温暖化の影響や、パソコンでの長時間作業などという背景から、スーツやネクタイ・ジャケットの着用は必要不可欠ではなくなった。スーツを着用していれば良かった従来とは異なり、ビジネスパーソンそれぞれが、仕事の場面や内容に応じて、どのような服を選んだらよいかを考える必要性は高まっていく。これからは「どこで・どんな仕事をするか」が服装選びの基準の一つになっていくだろう。

今後、SNS時代における視覚的なコミュニケーションが拡大する中、オフィスファッションがいわば名刺代わりとなり、一緒に仕事をしてみたいと相手が思うような清潔感・信頼感のある装いが一層重要視されるだろう。

■共立女子短期大学教授 渡辺 明日香(わたなべ あすか)

共立女子大学大学院家政学研究科修士課程修了。首都大学東京大学院人文科学研究科博士後期課程修了(社会学博士)。1994年から継続しているストリートファッションの定点観測をはじめ、若者のファッションやライフスタイルの分析、生活デザイン、色彩などをテーマに研究を行う。著書に『ストリートファッションの時代』『ストリートファッション論』『東京ファッションクロニクル』など。

バブル期の企業制服:デザイン性の高い時代を表すスタイル

各業界で制服の普及率は高く、着用は当たり前であり、制服は会社への帰属意識を高める重要なエレメントであった。サービス業の店頭やメーカーの製造現場では男女問わず制服を着用し、オフィスでは女性社員だけが制服を着用することが多かった。

また、当時台頭したデザイナーブランドや著名デザイナーの起用がブームとなり、流行していたビッグシルエットを取り入れた制服にリニューアルする企業も目立つ。バブル期においては、潤沢な予算を女性社員の制服にかける企業が多数存在した。

さらに、合成繊維の飛躍的な進歩で、制服用の生地素材は高品質で表情豊かに。魅力的な制服が増えたことで、制服が憧れの職業を選ぶ基準の一つとなり、客室乗務員や百貨店の案内受付の制服が話題になった。

就職氷河期~人生100年時代の企業制服:社員のリクエストを重視した機能性の高いスタイル

景気の悪化や非正規雇用の増加で制服を取り巻く環境が大きく変わり、大手企業の制服は激減。時を同じくしてファストファッションやビジネススーツを提供する店舗が増えたことも重なり、女性社員のオフィスでの装いは一気に私服化が進む結果に。

一方で、サービス業などではより洗練されたデザイン・コンセプトの店舗や制服へのリニューアルが加速する。中小規模の事業者向けに販売されてきた制服カタログでは、モデルが外国人から人気タレントやアイドルモデルになり、その人たちが着用する商品がヒットした。

制服が廃止され私服での勤務が増えたが、服装規定が明確ではなく、オフィスにそぐわない私服を着用する人もおり、1998年を過ぎた頃からは、職場環境改善を目的に制服が見直されるようになった。

また、バブル期とは異なり、デザイン・機能性はもちろん、メンテナンスなど維持管理コストについても厳しく検討される。加えて実際に着用する社員からのリクエストも重要視され、幅広い年齢層に向けて、サイズ展開・ブラウスやスカーフ・リボンの色展開など、きめ細かい対応が求められるようになった。

<総括>オンライン上でオーダーメイドできる企業制服が登場する可能性も?

世界的に見ても、日本は企業における制服の普及率が高く、制服を着用することが会社への所属意識を高める重要な役割をはたしていた。企業の制服は日本独自の文化とも言える。

企業の制服は、平成30年間で変化がみられた。バブル期においては、企業は潤沢な予算を女性社員の制服にかけたり、デザイナーの起用により流行を制服に取り入れていたが、景気の悪化に伴い、制服は経費削減の対象となり、制服を廃止する動きが顕著に。

就職氷河期から現在にかけては、企業の制服が見直される傾向に。デザインや機能性だけでなく、社員の意見を重要視するなどきめ細かい対応が求められるようになった。

今後、制服は支給や貸与されるのもから、個人の体型や好みに合わせて
色や形をオンライン上でオーダーメイドできる「仕事用の服」に変わってゆく可能性がある。

■桑沢デザイン研究所 ファッションドローイング講師 渡辺 直樹(わたなべ なおき)

イラストレーター、桑沢デザイン研究所、共立女子短期大学非常勤講師。著書に「日本の制服150年」、「日本のファッション」(青幻舎)、「おしゃれノート」(コクヨ)などがある

出典元:doda PR事務局(㈱プラチナム内)

構成/こじへい

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