まずは軽めの食事とスープから
さて、ウェルカムドリンクと共にいよいよスイーツコースがスタート!と思いつつ、実はコースのスタートは少し軽めの食事とスープから始まる。食事は「NARISAWA“bento”」と名付けられた素敵な3品で、「或る列車」のメニューは南青山に店を構えるレストラン「NARISAWA」のオーナーシェフ成澤由浩氏が監修している。
食材はそのほとんどを九州産にこだわっているが、実はこの食材たちに「或る列車」がほかの列車と決定的に違う深いこだわりが見える。各テーブルに備えられたメニューを開くとそこには、これから味わう食材の生産者の方々や、器、食器の制作者の方々の顔写真とこだわりや思いなどのコメントが書かれている。そう、「或る列車」は単に食材や料理にこだわっているのではなく、その食材や盛り付ける器の生産者、製作者にスポットがあたっているのだ。通常だとシェフや、列車のデザイナーなどに注目が行きがちだが、成澤シェフ自身もコメントの中でこうした協力者の皆さんへの感謝のメッセージを送っている。また、食材はJR九州の担当者が九州中を探し、実際に現地に足しげく通ってコミュニケーションを取りながら、総力戦で決定している。普段、何気なく、口にする食材、何気なく使用する食器の存在の尊さを改めて感じることができるが、これは「或る列車」ならではの魅力だろう。
食材の提供者のプロフィールがぎっしりと書かれたメニューカード
今回の「NARISAWA“bento”」は旨みがギュッと詰まった大分県産牡蛎の炊き込みご飯、歯ごたえと風味の遊び心が楽しい長崎県産トラフグと白菜、大分県のカボスポン酢のサラダ、佐賀県産のみつせ鶏もも肉と紅芯大根、菜の花と里芋の和え物梅肉と柚子胡椒の香りというラインナップ。そして佐賀県太閤ごぼうと和牛のスープがそえられる。ドリンクメニューも宮崎県都農ワインのスパークリングをはじめ、九州内の紅白ワイン、紅茶、日向夏ドリンクなどが用意され、いずれもフリードリンクとなっている。
住宅地を抜け、列車が大村湾沿いに出ると車窓いっぱいに湾の光景が広がった。それと同時に、ついに一品目のスイーツが登場!「或る列車」のメニューはその時々によって変更され、今回のメニューは1月と2月のものになる。コーススイーツは、カクテルグラスに盛り付けられた「カクテルスイーツ」、スープ皿を用いた「スープスイーツ」、そして「メインスイーツ」と進んでいく。今回はバレンタインも近いということで、それぞれ「告白」「セントバレンタイン」「誓い」とタイトルが付けられ、見た目にもロマンチックなメニューとなっていた。
見た目も鮮やかなカクテルスイーツ。上に載る果実は1房ずつ品種が異なる贅沢
揺れる車内でもスマートにサービスを行うクルーのみなさんはまさに職人!
今回、特に目を引くのがスープスイーツの「セントバレンタイン」。バリエーション豊かなチョコレートで構成された一皿は、乗客の前で完成させる演出がなされる。濃厚なチョコレートのコクの中にエディフルフラワーの香りが華やかさを添える。
ホットチョコレートをかけると下に隠れていたチョコレートアイスが登場する
1号車のキッチンではシェフがメインのスイーツの仕上げに取り掛かっていた