低金利が続いている。例えば三菱UFJ銀行の普通預金の金利は年0.001%。『スーパー定期』も預け入れ金額・期間に関係なく年0.01%だ(2019年1月末)。
それぞれ100万円預けても、普通預金で10円、スーパー定期で100円しか金利がつかないことを意味する(ここでは税金は考慮しない)。
「これではタンス預金と変わらない」と嘆く前に、外貨預金という貯蓄方法を考えてみてはいかがだろうか?
外貨預金とは何? わかりやすくいうと日本円以外での貯蓄&投資のこと
外貨預金と難しく書いたが、要は日本円以外のお金で貯蓄することだ。その目的は「金利」「差益」「リスク分散」などがある。
外貨預金の金利
外貨預金は銀行や証券会社などを通じて海外の通貨に両替するもの。日本の貯蓄金利は上記のような低金利であるが、米国の場合、10年国債で約2.75%の年間利回り(投資額に対するリターンの割合)だし、トルコの10年国債は約15%の年間利回りとなる。
これを読んだだけだと「100万円預けたら年に15万円も得なら、トルコの通貨(リラ)で貯蓄しないと損じゃない?」と思う人もいるかもしれない。
外貨預金の差益|外貨預金って儲かるの?
外貨預金の特徴は「為替レートの変動」がある。2019年1月現在、米国ドルは1ドル=約110円程度。仮に1万ドルを貯蓄しようとすると
1万ドル×110円/ドル=110万円
が必要になる(ここでは便宜上税金・手数料は考慮しない)。
しかし、ドルと円の為替レート(交換レート)は常に変動しており、仮に1ドルが120円になったとしたら、1万ドルは
1万ドル×120円/ドル=120万円
の価値になる。
その差益は
120万円−110万円=10万円
の利益が出る計算になる。もちろん差益には手数料や税金が課せられるので丸々10万円の利益を生むわけではないが、それでも同じ1万ドルでも価値が変わることは理解いただけるかと思う。
また、日本銀行は物価安定の目標を達成すべく、2013年1月に消費者物価の前年比上昇率を2%に定めている。達成はなかなか厳しい数字だが、仮に年率2%を達成したとしたら、100万円の商品は翌年102万円へ値上がりすることとなる。
日本の銀行に円で預けておけば、万が一金融機関が破綻しても「預金保険機構」により1金融機関あたり元本1000万円までと破綻日までの利息などが保護される(例外あり)。
普通預金や定期預金は1000万円までなら元本が保証されているため、運用で増えないとしても100万円預ければ100万円引き出すことができるのだ。
とはいえ、インフレで物価が上昇したら同じ100万円が翌年にはマイナス2万円分価値が下がることも生じる。これは「目減り」と呼ばれる。
外貨預金はリスクもある。こんな人にはおすすめしない
「金利が高い通貨で、しかも値上がりすれば利益も期待できるなら、外貨預金を始めない手はない」……と思われるかもしれない。しかし、メリットだけではなく、外貨預金にはリスクも伴うのだ。
前述1ドル110円で1万ドル購入すれば110万円の費用がかかるとしたが、もし1ドルが100円になる(円高)とどうなるだろうか?
1万ドル×100円/ドル=100万円
になる。
つまり、貯蓄した110万円が100万円に減ってしまうのだ。これは「為替差損」であり、外貨投資ではしばしば起きる事態である。預金とはいうものの、元本は保証されていないのだ。
また、米10年国債で約2.75%の利回りとしたが、こちらも変動する。金利が1%にまで減り、なおかつ円高になれば期待する利回りは得られない。
さらに怖いのがデフォルト(債務不履行)だ。これは債券の発行者が破綻などを原因に元本や利払いの支払いを遅らせたり、停止したりすることだ。国の財政が破綻するという予測が出ると、デフォルトのリスクが高まり、その国の通貨の価値が下がる。それは急激な円高につながり、為替差損の要因にもなる。
また、手数料と税金も馬鹿にはならない。見た目の高利率や差益を狙うと痛い目に遭うこともしばしばだ。
リスクを知らずに欲を張って投資する人や、1円でも値下がりすることに耐えられない人は外貨預金には向いていないといえる。
外貨預金初心者は何から始めればいい?
リターンもリスクもある外貨預金だが、では初心者は何から始めればいいだろうか?
まずは、海外旅行などでなじみのある国の通貨で貯蓄すると安心だろう。デフォルトなどを考えると、知らない国の通貨に投資するのはリスクが高い。また、金額も最初から100万円などを投資するのではなく少額で始める方がよいだろう。世界経済の動向などにより、為替レートや金利が変動することを実感してから、徐々に貯蓄額を増やしていけば安全性は高まる。
仮に100万円を貯蓄して、円高により1日10万円値下がりしたら、あなたは冷静でいられるだろうか? もし貯蓄額が1万円なら1日1000円の値下がりで済む。もちろん1000円も大金だが、生活が破綻するまでにはならないはずだ。
さらに、少額を分散して定期的に貯蓄すれば為替レートを平準化することも可能だ。
外貨預金初心者は「知っている国」「カントリーリスク(デフォルトの可能性が高い国)が低い国」「少額で開始」するのが良いだろう。
外貨預金にベストなタイミングってある?
円高で外貨預金をして、円安になれば差益を得られる。しかし、為替レートで底を見極めるのは難しいもの。「円高だ!」と預金しても、そこからさらに円高が進み差損が出ることもある。
結論から言えば外貨預金にベストなタイミングは無い。為替レートの値上がり値下がりばかりを追いかけるのではなく、リスクのとれる資産(例えば金融資産の10%以下に抑えるなど)で中長期的に日本と海外の金利差を狙うのが基本であり、差益は「おまけ」と考えよう。
前述の定期的に少額を分散貯蓄するドルコスト平均法も、タイミングによるリスクを減らす一助としてご一考いただきたい。しかし、デフォルトを起こせばこの手法といえ万能では無いので、ご注意を。