[×]悪いその後の対応:会社を休ませない、辞めさせない
多くの場合、人はストレス源から離れることができれば、悩みやストレスは減り、メンタルヘルス不調は改善します。ですので、基本的に働く人で仕事が原因のメンタル不調を起こしている場合、仕事を辞めればたいていの場合、その症状も病気も治ります。
一方、その時に、「住宅ローンがあるからやめられない」、「次の仕事がみつからないからやめられない」、「近所にどのような顔をすればいいの」と、仕事から距離を置くことを許せないご家族がたまにいらっしゃいます。この場合は、簡単には治りません。
[○]いいその後の対応:会社を休むこと、辞めることに備える
最悪の場合に備えておくことも大切です。治療により会社を休むことなく調子が戻ればいいですが、休まざるを得ない場合は、最長何ヶ月休めるのか。いつまで会社から給与が出るのか。その後の傷病手当(保険組合からの保証はいくらでいつまでか)などなど、知っておいたほうが、安心できることもあります。ぜひ、調べておき、対策を練っておきましょう。
今回のケースでは、奥様の方からご主人に通院をした方が良いのではないかと勧めたところ、本人もそう思っていたようで、最初からメンタルクリニック受診となりました。
ご主人自身は新しい職場の上司に、他人のミスを被らされたり、自分だけが沢山仕事をすることになっていて、疲れて仕事を続けていく自信がない、辞めたいと言っているとのことでした。しかし、主治医の意見は、薬を飲み始めて、もうちょっと働いてみたらということでした。
そして、睡眠導入剤と軽めの抗うつ剤を飲んで勤務を継続したそうです。後日談ですが、このご主人様は、奥様のサポートもあり、徐々に回復したとのことでした。仕事を辞めなくてよかったと奥様は喜んでいらっしゃいました。
働く人の5-6割が、何らかの不安・ストレス・悩みを持つといいます。対処できないからこそ、そのような状態になっているのです。だからこそ、味方が必要なのです。 多かれ少なかれ、皆様も似たような経験をした、もしくは、似たような経験を聞いたことがあるのではないでしょうか。今回の話が、ご参考になれば幸いです。
文/武神健之
医師、医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、BNPパリバ、ムーディーズ、ソシエテジェネラル、アウディジャパン、BMWジャパン、テンプル大学日本校、アプラス株式会社、日本風力開発株式会社といった一流外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立。「不安とストレスに上手に対処するための技術」「落ち込まないための手法」などを説いている。http://companydoctor.jp/