産業医面談の多くは、相談者本人のカラダの健康か、不安やストレスに関するものです。しかし中には、一緒に暮らすご家族(夫婦やパートナー)が、メンタルヘルス不調かもしれないという相談もあります。
今回は、“夫がうつかも“と相談にこられた社員(妻)へのよくある誤解とアドバイスについて書かせていただきます。
産業医面談にこられたのは30代後半の女性社員Aさんでした。ご主人が5ヶ月前の部署異動後から、なんだか調子が悪そうだとのことでした。もともとはよく食べ、よく寝る人だったのですが、この2ヶ月ほど、「最近眠れない・食欲がわかない」と言いはじめたということです。
[×]悪い初期対応:原因をきく
本人が言わない限り、原因はほとんどの場合仕事関係でしょう。私たちの多くは、起きている時間の半分以上を職場で過ごしているのですから、特別なプライベートでの要因がなければ、ストレスの原因はほとんどの場合仕事関係です。ストレスの原因はきくまでもなく、会社にあると思って間違いないです。
そして、考えればわかることですが、そのストレス原因をどうしょうもできないから悩んだりストレスを溜めているのです。本人から原因を言い出してこない時は、まだ本人は原因をいいたくないのです。無理に原因をきくよりも、きくべきことは他にあります。
[○]いい初期対応:体調とどうしたいかをきく
多くの場合、ストレスに悩む人は、自分の状況を誰かにわかってほしい、と考えています。自分の感じている不安やつらさ、身体の症状など、きいて大変な状況にあることを理解してほしいと。
ですから、安易なアドバイスは慎み、その代わり、症状を聞いた後は、本人がどうしたいのか、じっくり聞いてあげてください。大切なのは最後まで本人の味方であるというメッセージを理解してもらうことです。無駄なアドバイスを送るよりも、よっぽど大切です。
[×]悪い対処と対策:精神科(心療内科)に行くべきと譲らない
自分の辛さを理解してくれて人が、医療の受診を勧めた場合、多くの人は反対はしないものです。しかし、人により、医者に行くことに抵抗を持つ人も少なからずいます。そのような時は、無理に受診させる必要はありません。しばらく様子をみたいという場合は、いつまでか期限を決めて、それに従いましょう。
いざ受診となっても、メンタル系(心療内科・精神科)の受診には抵抗を持つ人も少なからずいます。そのような時は、とにかく医療につなげることを考えましょう。
[○]いい対処と対策:とにかく医療につなげる
そのようなときは、無理にメンタルクリニックを受診させるよりも、めまいならば耳鼻科、お腹の調子が悪いならば消化器科等々、症状にあった科、本人が納得する科を受診してもらいましょう。メンタル系でなければ何科を受診すればいいのかわからない場合、内科でもいいから医療につなぐことを優先してみてください。
そして、一緒に受診し、検査等がひと段落した時点で、メンタル系を受診した方がいいか、そこの医師(や看護師)にご主人の前できいてみてください。きっとご本人も、そろそろ納得する心の準備ができているでしょう。自分だけで全てを背負いこまずに、必要に応じて、医療従事者も巻き込むことは、夫の治療がすすむだけでなく、あなたの負担も減らしてくれます。ぜひ、覚えておいてください。