広がるHD-PLCの可能性
さらにこの進化したHD-PLC、1.電源のあるところであれば容易にネットワーク構築ができ、通信設定作業が不要、 2.マルチホップ方式による伝送距離の長さ、3.情報送信の安全性、という大きく3つの特徴を武器に、ほかにもさまざまな場面で活用が進んでいる。
たとえば、古く壁の厚い建造物では無線が届かないことが多いが、それが歴史的に意味を持つ文化財のような建物だと、追加工事さえ難しい。だがこうした場合も既存の電線を使えるHD-PLCであれば問題なし。また、監視カメラやWi-Fiホットスポットとしての設置が進む屋外街灯にHD-PLCを導入すれば、故障を感知し自動で管理センターに知らせることで保守費用削減につなげるなど、多機能なスマート街灯として広域での活用が期待できる。
さらに、金属に囲まれた移動体として通信が困難なエレベーターや鉄道車両の照明、カメラ、デジタルサイネージ表示などの通信伝送、また、水中や地下トンネルでの保守点検通信などにも用いられる例も増えていて、活用のフィールドがさらに広がっている。
パナソニック ビジネスイノベーション本部 HD-PLCプロジェクト 主幹 田中祥介氏。
何よりこのHD-PLCは、パナソニック代表取締役社長・津賀一宏氏自ら、旗振り役となって事業を推進する重要技術。「台湾電力でのスマートメーター採用を足がかりとし、日本や他の国への普及促進とさらなる技術革新への取り組んでいく」とのコメントしているほどで、「HD-PLCはこれからのIoT社会、すべてがインターネットにつながる時代において、ハードだけでなくソフトを含む諸々の技術を提供できる意味でもビジネスにおける大きなアドバンテージになる」と田中氏も胸を張る。
台湾から新たなスタートを切ったHD-PLC、その可能性と今後にますます注目していきたい。
■HD-PLC http://www.hd-plc.org/
取材・文/原口りう子