2018年冬、台湾電力スマートメーターへHD-PLC導入開始
こうした産業用途、さらには海外市場を見据えた最新トピックが、昨年スタートした台湾電力スマートメーターへのHD-PLCの技術採用である。台湾では2017年、脱原発に向けての電力改革などを盛り込んだ電気事業法改正案を可決。その一貫として、エネルギーを効率活用するためのスマートメーター導入が推進され、企業や工場に続き、2018年度には一般住戸26万世帯への設置が終了する見込み。その通信面を担う技術の一つとして、パナソニックが開発したHD-PLCが採用されることになったというわけだ。
ちなみにスマートメーターとは、通信回線を利用して自動的に電力通信量を送信する電気メーターのこと。従来、検針員などが行っていた作業を省略して通信のみで行えるほか、個々の電力需要に合わせた細かい制御が可能になり、電力を有効活用できるというメリットがある。そして今回、台湾電力のスマートメーターの通信手段に選ばれたのが、HD-PLC。事前の実証実験では100%のデータ収集を実現、昨年12月より本格導入が始まった。
だが、そもそもなぜHD-PLCなのか。
日本でもスマートメーターは普及しつつあるが、その通信手段は無線方式や携帯方式などが主流。なぜ有線でなければならないかというと、実はここに台湾ならでは、の事情がある。というのも台湾には古い集合住宅が多いのに加え、電気メーターも日本のように各戸一台ではなく、全世帯のメーターが一か所に集約されているのが一般的。しかもそのほとんどが地下に設置されているため、無線が届きにくい。そこで既存の電力線をそのまま通信回線として使えるHD-PLCが最適、となったのだ。
このスマートメーターへのHD-PLC導入に際し、同社ではデータの集約装置である「コンセントレーター」用モジュール、スマートメーターとコンセントレーターの中継機器「リピーター」用モジュール、そして、電力会社に使用電力量を送るための「スマートメーター」用 FAN通信ユニットという3点を製造し、台湾電力へ納入。またHD-PLCに関係する通信制御を行うソフトウエアの開発も行っている。
左と中央が通信基板となる2つのモジュール、右がHD-PLCを組み込んだパナソニック初のスマートメーター。
HD-PLC関連デバイス製造にあたり、2018年10月より、同社内工場に3本のセルラインを新設。月間で約1万3000台の生産能力を有する。