設立当初、会社の成長は停滞。しかし、技術力を積み上げた
――会社の設立から『ルンバ』の発売まで12年かかりました。この間の経営は大変だったのでは?
「イエス。確かに会社に利益を生み出せない状態が長く続きました。ですが、産業用ロボットなどの開発により、技術力は養われました。当時、地球外探査を目的としたロボットは非常に大きなサイズで開発されていたのですが、アイロボットとして初めて作ったジンギスにより小型化に成功。その後、ロボットは壊れやすく、厳しい環境下では使えない、という常識を覆す研究にも着手しました。それは『ファーストルック』というロボットで、危険地帯へ投げ入れて偵察することを目的としたものでした。5mの高さから落としても壊れず、着地後に自動で元の姿勢に戻り、階段を上ることもできるのです。このようなワクワクするようなロボットを作れたのはいい経験でしたね。ちなみに、ジンギスは、科学雑誌『ナショナルジオグラフィック』の表紙を飾ったんですよ!」
――でもビジネスがうまくいかないと、モチベーションをキープし続けるのが難しいですよね?
「我々は『社会に受け入れられるロボットを作ることに成功すれば、最終的にお金は入ってくるだろう』と考えていました。一番大事なミッションは大きな会社を作ることではなく、問題を解決できる実用的なロボットを現実にすることにありましたから。もし当時『お金を稼ぐこと』に注力していたら、1〜2年で倒産していたでしょうね」
どこに何があるのかを把握していた昔の研究室
「MIT時代のラボは、写真のように狭くて、自作のメカや計測器など、たくさん物を置いていました。散らかっているように見えるけど、結構、整理してあるんですよ(笑)」
2002年に発売された初代ルンバ
最も効率よく掃除ができると考えた円形のデザインを初代から採用。ネーミングは、ダンスの〝ルンバ〟のように踊りながら部屋を掃除するイメージから命名したという。
取材・文/成田 全(ナリタタモツ)