渡辺謙、舘ひろし、武井咲など、大物スターが惜しげもなく登場。「文字が小さい!」と叫んだり、お尻で商品を踏むなど大胆なアイディアのCMが大当たりし、ハズキルーペは累計500万本超も売れる大ヒット商品に。
この商品とCM、両方の生みの親がHazuki Companyの松村謙三会長。松村氏はプリヴェ企業再生グループを率いる企業買収の専門家で、そもそもは“ものづくり”も“CMディレクション“も畑違いの経営者です。にもかかわらず、どうしてここまでのヒットを創り出せたのか?
着想のヒントを学ぼうとDIMEが直撃すると……会長ならではの巧みすぎる戦略が秘められていました。
広告費に年間100億円以上(!!)もかける理由がわかりました!
企業の宣伝広告マンには、マネができない。
――会長自ら手がけたあのCM。 2018年度のCM賞で3冠を獲得されたそうですね(※)。
松村氏 全て通信大手3社を抑えてトップに立ちました。CM総研の社長の話では、これまで長年ランキングトップを占めていた通信大手3社を抑えて、第1位を獲得したそうです。弊社は、これまで宣伝広告費に100億円以上を投資してきました。また総監督、企画、脚本、チーフスタイリストに至るまで私自身が現場のトップに立って指揮したCM作品です。イメージCMやタレントのプロモーションビデオのようなCMではなく、商品を売るためのCMを目指して作りました。
――まさに、そこで、です。超人気の商品とCMの両方を作り出した『ハズキルーペ』の生みの親に、ヒットを生み出すコツを伺い、ビジネスパーソンのヒントを見つけられればと思っています。
松村氏 CMクリエイターを替えて、宣伝広告部長が自ら僕と同じことをするのは、無理だと思います。全ての事業リスクまで取れるとは思えません。トップが覚悟を決めたらできると思います。
――トップ自ら手掛けたからこそできたということでしょうか。
松村氏 CMなどの宣伝広告費は、大企業であれば、巨額です。自動車メーカーであれば、数千億円の投資です。工場投資よりも遥かに巨額な場合もあります。本来なら経営トップが自ら仕切ってやるべきものだと思います。サントリーより10倍規模の大きい多国籍企業、ネスレの昨年亡くなった中興の祖と言われていたトップは、マーケティング宣伝広告こそ経営トップの仕事である、と言い切っています。担当役員や部長レベルに任せてしまうと、スポンサー企業の担当者は、CMクリエイターに丸投げしてしまいます。反響や期待どおりの売り上げが伸びなかった場合、簡単に広告代理店に責任転嫁ができます。自分の立場は安泰です。丸投げされるCMクリエイター側からすると、スポンサーの金でCMの作品賞を受賞したいがためのイメージCMを作りたがり、商品を売るストレートなCMは、ダサいという表現で切り捨て勝手気ままなCMを作り続けているというのが広告業界の現状です。
※宣伝会議「ブレーン」年間グランプリ第1位獲得。コマーシャルフォト年間第1位獲得。日経MJ年間ランキング第1位獲得。