今アメリカでの小売業界で注目されているのが「フードホール」。
フードホールとは、カジュアルで安価な食事を提供しているイメージがあるフードコートに高級感を持たせたり、トレンドの店舗を集めたりして構成された食事スペースのこと。
昨年4月、大阪に約1,500坪という広大な面積のフードホール「LUCUA FOOD HALL」がオープンしたことでも話題となりました。
アメリカの調査会社「Cushman&Wakefield」のレポートによると、2015年には全米で70か所だったものが、2018年末には180店舗に増加し、2015年から2020年にかけて市場規模が3倍に拡大すると予測されています。
ニューヨークで人気のフードホール
次々と新しいフードホールがオープンしているニューヨークですが、その先駆けとなったのが「チェルシーマーケット」です。
1997年にナビスコの工場をリノベーションして作られたフードコートです。工場の面影が残り、歴史を感じさせるレンガ造りの趣のある建物です。カフェやレストランだけでなく、スパイス専門店や雑貨店など40店舗以上のテナントが入っています。
ロブスターをはじめとした新鮮なシーフードを用いて調理した料理をその場で食べられるカウンターがある「ロブスタープレイス」や、日本にも上陸して話題となった、可愛い魔女のイラストがトレードマークの「ウィッチブラウニー」をはじめとして、こだわりのテナントが揃っています。
なぜ今次々にフードホールがつくられているのか?
企業がフードホールを次々に設立している理由は2つあると考えています。
1.客足が遠のいている施設に足を運んでもらうため
大型ショッピングモールの地下にある、ファストフードをはじめとするカジュアルなお店が集まった「フードコート」は、あくまでショッピングモールに来る人が買い物の「ついで」に行く場所であり、フードコートが主役になることはありませんでした。
しかし、オンラインショッピングが主流となり、様々なエンターテイメント施設ができた今、ショッピングモールへの来客数は減少傾向にあります。
そのような状況下で、ショッピングモールに来店してもらう策として出てきたのが、トレンドの飲食店を一か所に集約させた「フードホール」なのです。
フードコートとフードホールの位置付けは完全に変わったのです。
2.リスクを分散させるため
1つの独立型店舗で施設を運営するのではなく、多くの店舗を入れることでリスクを分散させることができます。
1店舗あたりのスペースが小さく、初期投資も少ないフードホールの店舗を変更することは、独立型店舗を入れ替えるよりも、コストが低く済みます。
もし業績の悪い店舗があれば、他の店舗と入れ替えることで、フードホール全体の業績悪化を避けることができます。
出店側としても、ニューヨークやサンフランシスコのような賃料がとてつもなく高い都市で独立型店舗を立ち上げるよりも、フードホールに出店する方がコストが低くなるため、双方にとって魅力的なものとなっています。