医師がすすめるカラダにイイこと!教えてDr倉田
「今日は寒いから、辛い食べ物を食べに行こう!」
こういうセリフを話したり、聞いたことはありませんか?
中華料理の中でも辛い四川料理の豆板醤や山椒、韓国料理のキムチやコチュジャン、カレーをはじめ世界中で愛用されているのが「トウガラシ」。
今回は、辛い物の代表である「トウガラシ(カプサイシン)は体を温めるのか!?」をご説明します。
トウガラシの成分”カプサイシン”?
「カプサイシン」という成分をご存知の方も多いでしょう。
「カプサイシン」は、「トウガラシ」に多く含まる色素で、正式名称「カプサイシノイド」という天然の有機化合物です。
「カプサイシン」を口から食べると、辛みと体が熱く感じられる「発汗作用」があります。皮膚に触れると、ヒリヒリした感じがあり、くしゃみや涙が出ることもあります。
「カプサイシン」は、大部分が胃や小腸で吸収されますが、一部は大腸まで到達します。大腸の中でも直腸には、カプサイシンが結合する「カプサイシン受容体」が多いので、沢山食べるとお尻が痛くなることもあります。
「カプサイシン」の刺激作用は、防犯目的の「催涙スプレー」にも応用されています。
“カプサイシン”は、体内でどう働く??
「トウガラシ」は、漢方薬など古くから愛用されてきましたが、辛み成分「カプサイシン」の効果が解明され始めたのは、1990年代です。「カプサイシン」が体に与える作用は、
1 粘膜を刺激する!
「カプサイシン」は、胃や腸の粘膜を刺激し、消化酵素を分泌して、食べ物の消化や吸収をすすめます。
2 中枢神経を刺激する!
「カプサイシン」が吸収されると、脳や脊髄など中枢神経が刺激され、「アドレナリン」というホルモンが分泌します。結果として、エネルギー代謝(体内での熱産生)が活発となり、「発汗」が引き起こります。
3 殺菌・抗菌作用!
米びつに「トウガラシ」を入れた防虫、漬物作りなど食品保存として、昔から現代に至るまで活用されています。
「カプサイシン」は、少量だと胃腸粘膜を保護する一方、大量の場合は感覚(知覚神経)を麻痺させ、痛みを増やすという不思議な2面性を持っています。
「辛い物は少量だと良いけど食べ過ぎは良くない」言い伝えは医学的にも正しいのです。
「カプサイシン(トウガラシ)」は口の中に入ると汗をかく?
汗をかきながら辛い食べ物を頬張る時、無類の幸せを感じませんか?
辛い物を食べた時(辛み刺激)に汗をかく(味覚性発汗)は、顔、特に額や鼻、頬を中心に起こります。口に入ると汗をかきますが、胃の中に食べ物が入ると汗をかきません。
口の中を50℃に保っても発汗しないことから、「カプサイシン」など辛み成分が口の中を刺激することで発汗が起きることが報告されています。発汗量は、投与後約1分から増えはじめ、2分で最大量に達し、約4分後には減るという凸状のカーブを描きます。
発汗によって体の中の熱が奪われ、体表温度が下がることで、爽快な気分になります。
東南アジアなど気温や湿度が高く、暑い地域で辛い物が好まれるのは、この爽快さを求めることも関係しています。