「カプサイシン」に体を温める作用はあるのか無いのか??
辛いと温かいは共に、英語で「Hot」。
辛い物は体が温まるイメージがありますが、体温を上げる効果があると思いますか?
私は「カプサイシンに体温を上げる効果があるのか無いのか?」という論文をいくつも真剣に探してみました。結果としては「△」。
人間or動物、トウガラシの投与量(人間には大量過ぎるもの含め)など様々ですが、「体温が約0.1~0.5℃程度上がった、変化しなかったor低下した」と実験によって結果に差があります。
「カプサイシン」を食べるとポカポカな気分になるので、「体温が上がる感覚にはなるけれど、測定出来るほどには温まっていない(僅かな体温上昇にとどまる)」ようです。
そもそも「汗をかくのは、熱を逃がす放熱手段」です。体内の熱が奪われ、結果的には、体温低下の方向に働くと考えられます。
では、「カプサイシン」配合の入浴剤や湿布剤はどうでしょうか?
2011~2013年に都内の大学病院で、「成人男女15名、全身麻酔で2時間以上の開腹手術を行う患者さんを対象にカプサイシンの保温効果実験」が行われました。
全身麻酔の手術では、麻酔薬や開腹・肌の露出から体温が低下しやすく、麻酔からの醒めが悪くなることなどに繋がります。そのため、手術室では電気毛布やベッドウォーマーなど加温器具を使い、保温に努めます。
約7×5cmの布袋にトウガラシ5~7gを詰め、首や手、足に当てておき、足の皮膚温をセンサーで記録する方法でした。
もっとも温度が上昇したのは、胆嚢と胃の全摘手術をした80歳代女性、トウガラシ袋を着用している足の方は着用してない側に比べ、0.7~1.0℃高い結果でした。その他全体では、約0.2~0.3℃上昇していました。
手術中の保温方法としては、「トウガラシ」単独では心許ないのですが、人間での効果を測定した報告は非常に少ないので、貴重な実験なのです。
「カプサイシン」は、体の中で脂肪の燃焼や代謝が上昇することから、現状では「体温を上げる効果はあると言えばあるが、実感できるほど上がる訳ではない」ようです。
食べる場合や着用する場合ふくめ、「体を温める効果」の検証にはこれからも研究が必要でしょう。
「カプサイシン」は適量ならば、消化機能を高める働きを持っています。
辛い食べ物を1人でガツガツ大量に食べるよりも、辛い鍋などを家族や友人と囲み会話を楽しみながら食事をすることで、体温以上に「心を温める効果が高い」と考えます。
取材・文/倉田大輔(池袋さくらクリニック 院長)