アタリなしの試練が続く…
さあ、釣り始める。右舷前から2番目が僕、左舷前から2番目が正林さんだ。早々に、トラギスやレンコダイなど、アマダイの定番外道がかかる。おろしたての竿「メタリア アマダイ」の感度がいいのだろうか、外道のアタリが明確だ。今まで使っていた「極鋭ゲーム73」より竿先が硬いので、本命が来たときの針がかりもよさそう。1時間ほどして左舷中央で、53cmがあがる。デカアマは、どういうわけか昼過ぎから釣れ出すことが多い。こんなに早い時間から釣れるとは、いよいよ期待が高まる。
だが以後、10時になっても11時になっても、僕には外道のアタリすらない。他の釣り人も視界に入る右舷10名中、本命は右舷ミヨシ(一番前)が30cm級を釣っただけ。僕の右隣の釣り人は仕掛け、そして竿さばき、糸さばきからして、かなりのベテランと見受けた。なにせ“天秤のフックに水中ライトをつけてその先に錘を垂らす”なんて仕掛けは、初めて見たどころか、そんなやり方があることさえ知らなかった。そのベテラン氏には、外道すら来ない。
されど待てば海路の日和あり、11時を少し回ったところで、明らかにアマダイとわかるアタリが来た。小気味よく、クイクイと引き込む。大きくはないが、2019年初物ゆえ心躍る。ところが30mほど巻き上げたところで、手応えが消える。バラした? アマダイは餌を吸い込む習性があり、針がかりが甘いことはあまりない。僕は今までアマダイのバラしなしなのに、無念の巻き上げとなった。
ところがところが、手応えがなくなったのは、アマダイがかかった仕掛けがベテラン氏のラインにからみ、氏の巻き上げ速度が僕より早かったためで、バラしではなかった。この説明ではなんのことかわからない人も多いだろうが、要するに僕の代わりにベテラン氏が釣り上げてくれたのだ。釣った感は薄いが、何はともあれ、釣れればめでたし。かたや正林さんには、全くアタリなしの試練が続く。
信じる者は救われない!?
しかし、その後が続かない。そして12時過ぎ、なぜか電動リールが動かなくなる。電源は入っていて、水深は表示されているし、電子音も鳴る。だがもっとも肝心な、巻き上げをしない。仕方なく、手で巻く。錘は60号と軽めだが、水深は約100mある。重労働とはいわないが、時間がかかる。それでもデカアマが来ることを信じて、集中し続けた。
電源オンなのに、動かない。ギアが外れたか? 1年間の保証付きだが、購入は2017年11月で期限切れ。はたして修理費用は?
“信じる者は救われる”、この格言は釣りには通用しないことは重々承知だが、今回も改めて思い知らされた。電動リール故障以降沖上がり時まで、ついぞ何もあたらない。僕だけではない。視界内の右舷、どこにも本命のアタリはないようだ。ところが納竿も近い2時前、僕の真後ろでざわめきが起きる。振り返れば正林さんの竿が、大きく曲がっている。
上がってきたのは、47cmのアマダイ、デカアマと呼んでいいサイズだ。下船後に聞くと、「午前中は全くアタリがなく、3釣行連続アタリなしかと意気消沈していた。午後になってチビアマを2匹、最後に47cmが来た」という。アマダイ釣り、またしても正林さんに完敗だ。
連敗中の正林さんとはいえ、チビアマを釣ったからと満足できるはずはない。最後まで集中していたはずだ。そういう意味では、僕も同様となる。しかし明暗はくっきりと別れた。そこで教訓。“信じる者は救われる、こともある。そして信じない限り、救われない”。
ともあれ、今回の最大の目的は打倒・正林ではなく、「メタリア アマダイ」及び「アマダイ釣り最強の天秤」の実力検証だった。だがいかなる道具をもってしても、魚の食いの悪い日に当たってしまってはどうにもならない。こんな日に47cmを釣る人は、単に運がいいだけだ(正林さんも満面の笑みで頷く)。
今までの経験上、ここまで食いの悪い日は滅多にない。早々に、仕切り直しをせねば。
文/斎藤好一(元DIME編集長)