オンラインショッピングでも店舗と同じ接客を可能に
――店舗だと丁寧に店員さんが商品の説明をしてくれますが、ネットだと、分からないことが聞けなかったり、レビューを参考にするしかない。ネットからでも商品の解説してもらえる施策はありますか?
たしかに、それは一番の課題です。やはり、従業員は私どもがお客様に提供できる一番の価値だと思っています。そこの知見を、いかにネット上でもお客様に便利にご利用いただけるようにするかという点は私どもとしても考えていかなければいけないし、挑戦していかなければならないポイントだと思います。
――チャットはいかがですか?
チャットも、チャットボットを試したことがあります。ただ、現状ではなかなかお客様に満足いただけるレスポンスには達していません。ただ、AIの時代でありますので。そういうテクノロジーを上手く活用しながら、お客様のご期待にお応えできるような方向を考えていきたいと思っております。お客さんがこの商品について知りたいということがあれば、すぐにパッと答えがでてくるようなところを完成形としては考えております。
――店頭だと、商品の違いはどこなのかとか、発売した年によって値段がぜんぜん違ったりするときに、店員さんがこっそり「正直、機能はあまり変わらないので、こっちの安い方を買ったほうがお得ですよ」みたいなヒントをくれたり、消費者として嬉しいアドバイスをいただけたりします。一方でネットだと、結局は自分で調べるしかないという課題があります。御社の場合、店舗に行って聞くことができるのは、大きな差別化のポイントかと思いますが、いかがですか?
たしかに、ネットでも、お客さんに、せっかく社員がそういった知識があるんだから、それをネットでも利用したい、それを提供したい、ご利用いただけるようにしていきたいという思いは、すごくございます。そのうち、そういうサービスが始まるかもしれません。
一方で、電話注文でも受付をしておりますので。ご質問のあるお客様は、電話でお問い合わせいただくこともあります。電話受付も社員が対応しています。
――でも、商品知識的には、全部に精通しているわけではないということですね。
そうですね。もし、ご不明な点があれば、担当の社員から別途折り返しさせていただくといった対応を取っています。
祖業のカメラには特設サイトも
――家電商品のページに商品の解説が出ていますが、それは専門的な人が書いているわけではないのでしょうか?
専門の社員が書いている部分と、一般的なカタログのデータをベースにしたものがあります。そのあたりの充実も、今後の課題だと思います。
――従業員が、御社の価値というのは、すごく腑に落ちるというか。やはり、僕らとしても期待してしまう部分ではあるので。ぜひ、そのへんの充実に期待したいですね。
特にカメラについては、私どもの祖業でありますので、スペシャルな特別サイト「PHOTO YODOBASHI」を作っています。商品知識を越えた部分、レビューなど、かなり詳しく展開します。全く同じスタイルではないにしても、他の商品分野でも、商品の情報をしっかりとお客様にお伝えできればと思っています。
――最後に、2019年にチャレンジしていきたいことや意気込みはありますか?特に、ECの比率を2017年3月期の16%から50%の比率まで押し上げるということをお聞きしたいです。
結果的にEC比率は増えていくと思います。確かに年々ネット比率も上がってきています。しかし、我々としてはネットの比率を上げていくことに注力するよりも、お店を利用いただくお客様に、もっとネットも便利にご利用いただくという点を重視しています。
2019年はますます、品揃えを強化していきたいです。特に、ジャンルはだいぶ広がってきましたので、品揃えの厚みを増やしていきたい。それから、やはり何よりも、お客様が欲しいときに、すぐにお届けできるように在庫の確保をしておく。こういった、基本的なことを、来年度もしっかりと進めていこうと思います。配送サービスについても、よりお客様に便利に使っていただけるような取り組みを今、いろいろ開発しておりますので、2019年もぜひ注目していただければと思います。
DIMEの読み
バーコード値札からオンラインに移行させる手法は、主にスーパーなど生鮮食品の生産者情報のアクセスに使っていたが、家電量販店や総合通販企業が行うのは初めての試みだ。お店で商品を見て、ネットの最安値で買うという家電量販店のショールーム化が問題となっているが、それを解決する意味でもバーコード値札は今後の同社のEC成功のカギとなる施策だと言えるだろう。値札のこの仕組みを知らない人も多いと思うので、もっと積極的にPRしていくことが必要ではないだろうか。
レコメンド機能に関しては、便利と思う人と煩わしいと思う人で評価が分かれるところだと思う。筆者はアマゾンのレコメンドがメールで来るサービスを大変便利だと思っている。みなさんはいかがだろうか? 今後の動きを注意深く見守りたい。
一方で、ヨドバシカメラの一番の強みは接客だろう。店頭の接客がオンラインで実現できるようになったら、ヨドバシ・ドット・コムの優位性はゆるぎないものになるはずだ。実際、家電量販店の店員の商品知識は豊富で接客は優れているし、レビューよりも参考になる部分はある。
数ある総合通販のライバルを尻目に成長を続けるヨドバシ・ドット・コム。マーケットプレイスやコンテンツの販売など、アマゾンの優位性を覆せない点も多々あるが、存在感は確実に高まって来ている。従業員の持つノウハウや知識、接客力をオンラインにどう活かしていくかが今後の成長のカギとなるだろう。
取材・文/稲垣有紀、石崎寛明(DIME編集部)
稲垣有紀/ダイレクトマーケティングの専門紙「日本流通産業新聞」通販フルフィルメントデスクを経てフリーライターに。代表作は翔泳社刊「これが売れてるホームページだ!」。