●会社の人件費抑制で本格的な競争社会が到来
溝上さんの推定では、企業は継続雇用の対象となる高年齢者を、次のように評価しているという。
■対象者の約10%が本当に会社に残ってほしい人。
■約60%が、給与分は働いてくれることが想定される、可もなく不可もない人。
■残りの約30%は、残ってもらうと会社の大きな負担となる人だ。
「会社は、社員の見切りを50代前半でつけると考えられます。その年代で部長になっていなければ、少なくとも昇進のラインから外れていることになります」
50代前半での部長就任が会社で生き残る目安とすると、必然的に40代前半で課長になっていなければならない。すると30~40代にかけて、課長ポストを巡る社員間の競争が激しさを増してくる。
もしも50代前半で、会社が不要と判断する30%に属してしまったらどうなるか?
かつては、本社での役割を終えた人は子会社へ出向というパターンが多かったが、最近は子会社も連結決算の対象となっていて、もはや余剰人員を受け入れる余裕はない。したがって、会社側は、「早期退職制度」や「希望退職制度」を活用して、積極的に30%の人たちを減らしていくことが想定される。
早期退職や希望退職といえば、これまでは、リストラなどで一時的な措置として実施されてきた。しかし、今後は、人件費の抑制のため常態化することになる。
「会社は退職金の割り増しなど、一時金を上乗せしてでも、辞めてほしいと考えています。実際にそうした企業は増えてきています」
もちろん、雇用延長で働く60代も安穏とはしていられない。正社員として働ける定年延長であれば別だが、再雇用となる場合は、もともとの給与基準が低い子会社での雇用になる可能性が高くなる。これは継続雇用制度が適用される企業の範囲がグループ企業にまで拡大されたためだ。また、継続雇用制度では、高年齢者の能力に応じて、常勤か非常勤に選別されるケースも増えていくだろう。
雇用延長にともない、順調に昇進した人は、60歳以降も比較的高い給与がもらえ、生涯賃金は確実に増える。可もなく不可もない層は、ほぼ横ばいとなるだろう。一方、会社に必要とされない30%の人の生涯賃金は、減少する可能性が高い。高年齢者雇用は、サラリーマン社会に本格的な選別をもたらす契機となると言えよう。