65歳定年制はもとより、再雇用制度で雇用継続を希望する社員は、65歳まで働くことができるようになる。そこで、気になるのは60歳以降の給与だろう。
すでに65歳定年制を発表している大和ハウス工業は、定年延長後の給与水準を60歳時の6割程度にする予定だ。従来、嘱託社員として再雇用していた場合の4~5割より、65歳定年制導入で1~2割引き上げるという。同じく、サントリーは60歳時の6~7割程度とし、職位により3段階に分ける見通し。福利厚生についても、60歳前と同じにするとしている。
「再雇用制度で継続雇用される場合は、60歳時の給与の5割程度が一般的。65歳定年延長とする大企業では、それよりも1~2割引き上げるところが多くなるでしょう」(ジャーナリスト・溝上憲文さん、以下同)
●60歳以上の人の給与は40~50代が負担する
では、継続雇用された高年齢者の人件費は、会社がすべて追加で負担してくれるのだろうか? 溝上さんは「それはない」と否定的だ。
「恐らく、現役世代が実質的に負担するはずです。今までは、サラリーマンにとって40~50代でもらう給与が、生涯で最も高い水準でしたが、まず、その部分が抑制されるでしょう」
給与の抑制とは、従来型の年功序列による昇給がほぼなくなることを意味する。つまり、40代以降の給与は横ばいが続くことになるのだ(3ページのグラフ参照)。役職が上がっても、給与は上がらないというケースも増えるという。
「先日、大手ファイナンス企業で、50歳の課長が平社員に降格される人事がありました。これはレアケースで、多くの企業が一従業員に対して、そんな大胆な降格や給与の引き下げはできません。さらに、40~50代の給与を抑制するにも限界があり、それだけでは高年齢者の給与負担分を捻出することは無理なのです。そこで、今後は人件費抑制のために様々な手段が用いられるでしょう。
すごい例では、ある大手電機メーカーが工場を子会社化し、その工場に勤務していた従業員を、そのまま再雇用しました。その際、仕事の内容が同じなのにもかかわらず、給与水準は新たに設定した子会社のものを適用することで、引き下げ幅を大きくしたのです」