ご質問にある「速いかどうか」は、結局のところ「どれだけ早く・長くスロットルを開けられるか」に尽きます。ですので、ライン取りもアウト・イン・アウトを基本に、どれだけコーナー出口でスロットルを開けられる体勢を整えるか、が重要です。そうなるとライン取りは出口から入口に向けて逆算して考えなければなりませんし、車体の向き変えであるとか、そのためのブレーキングとか、倒し込みのタイミングなどなど、考えるべきことがたくさん増えてきます。そして考えてもなかなか実践できないというもどかしさが、サーキット走行という魔界の魅惑なのです。
さて、公道のライン取りについて言及すると、まず「速く走るためのライン取り」という意識は捨てた方がよいと思います。公道は、サーキット以上に意地悪なレイアウトになっています。というより、公道はサーキットのようにスポーツ走行=限界に挑戦するためには作られていません。自然の地形や地域の要請、時には政治的な思惑によって作られています。ですので、先が読めない人生のようにとんでもなく難しい複合コーナーが連続したり、対向車歩行者その他もろもろが多数登場し、難易度はサーキットよりはるかに高いのです。
そんな中でのライン取りは、「いかにして安全マージンを取るか」と考えることがベストです。ケースバイケースですが、対向車線に近付かないよう、左コーナーならイン・イン・イン、右コーナーならアウト・アウト・アウト……、あ、結局つまりキープレフトですね。やっぱりキープレフトが大原則としか言いようがありません。左コーナーでアウトに寄ること、そして右コーナーでインに寄ることは、対向車線に近付くことに他なりません。そして対向車はいつセンターラインを割ってくるとも限らないのです。
かといって、実際に走っているとキープレフトにばかりこだわってもいられません。コーナーの左右に関わらず路肩側には浮き砂や落ち葉、苔などバイクをコケさせようとする邪悪要素もたっぷり潜んでいますから、キープレフトを貫徹しようとするとコロリとやられます。また、山道での左コーナーは斜面などにより先が見通せないブラインドになる場合が多いので、その際はわずかにアウト側からコーナーに入ることで先が見通しやすくなるなど、そのつどの工夫も必要です。いずれにしても意地悪パターンが無限に用意されているのが公道ですので、それらをかいくぐれるような安全なラインを臨機応変に選んでください。
文/高橋 剛