■Performance
まず、この真空管アンプの出力は4W+4W(4?8Ω)しかない。ヘッドフォン出力は1W+1W(32?600Ω)である。音はともかくヘッドフォンアンプとしてのスペックはなかなかだが、パワーアンプとしては、最近のクラスDアンプと違い非力なので大型スピーカーを鳴らそうなどと考えてはならない。また小型だが低音を出すためにロングストロークで能率が低いスピーカーもNGである。できれば高能率のフルレンジのバックロードホーンとか、フルレンジ一発のバスレフ向きだ。どちらにしても大音量は望めないのでデスクトップ向きである。
本機の音は真空管アンプらしからぬ、ザラザラした音である。真空管だから音はなめらかと思って聴くと驚くに違いない。特に女性ボーカルが荒い。デジカメで言えばISO感度12800のような感じだ。甲斐バンドとか吉田拓郎とか尾崎豊を聴きたい。音の粒立ちがいいというよりは何かが欠落してギザギザな感じ。これを解消する手段として考えられるのが、真空管の交換だ。特に初段に使われる6N2に相当する「北京GN2」を交換してみよう。互換性がある真空管には、6H23N、6N11、6922、E88CC、6DJ8などがある。幸い手元に上海問屋『DN-10497』用の高信頼管「PHILIPS 6922」があるので差し替えた。なめらかなサックスが楽しめる「The Things We Did Last Summer」の音が見事によみがえった。低音が出て、重心が下がり音像定位がハッキリした。ステレオ感もある。効果抜群だ。さらに調子に乗って「SYLVANIA 6DJ8」に交換。さらにサックスが力強くなり高域が伸びた。
これでかなり真空管らしい音になったので、今度はFU32を交換してみよう。国内ではほとんど売られていないが、互換性のありそうな真空管にアメリカEIA6252、イギリスQQV03-10、CV2799、TT20、日本2B52、6252、オランダQQE 03/20、ロシアrY-32、その他にもAX9910、C180、SRS4452、832Aなどがある。今回はeBayでドイツ製とロシア製に球を見つけたので、その音の印象をお伝えしよう。
ドイツの大企業シーメンスの真空管「SIEMENS QQE 03/20」。ペアで24.2ユーロだった。ドイツの科学は世界一に期待していたのだが、低音が全く出ない。粒立ちよくメリハリもあるが、中低域の量感に乏しく、高域よりの音だ。情報量はアップした。エージングで化けるかもしれないが、ツノが太すぎてアンプの端子が差し込めない。削るか、細い線をハンダ付けしないとこのままでは使えないのが難点。
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ロシアの「rY-32」は外見もサイズも「北京FU32」に瓜二つだ。値段はペアで18ドルと滅茶苦茶安い。リトアニアから購入した。日本だと「北京FU32」がペアで3500円もするのだ。音はボーカルが繊細でFU32よりも情報量が多い。音は鮮明で粒立ちが良くなる。音色は明るい。