■ドライバーの負担が減っている
「ディストロニック・プラス」そのものは、新たに「ステアリングアシスト」機能が加わり、使う範囲が拡がった。北海道の追い越し禁止区間が延々と続く片側一車線の道でオンにして使うと、車間距離を一定に保ち、さらにコーナーでは自分がハンドルを切りながら、ハンドルも自動的に回ってくれる。
そうしたアシストを受けながら運転していると、ドライバーの負担が確実に減っているのがとてもよく感じとることができる。これまで使っていた神経と注意力を使わずに、キープできている感じがするからだ。
だから、この種の安全運転支援デバイスに対する上っ面な批判、例えば「注意力が散漫になり、不注意や居眠りにつながるのではないか」といったような指摘が大間違いだと反論することができる。運転を放棄して、クルマに心身ともに依存してしまうのではなく、ドライバーが負担せずにすむものならば、その部分はクルマが肩代わりしましょうという性質のものなのだ。
そして、余った神経と注意力は余力として、万が一の場合に備えておく。仮に、今までは100の神経と注意力を使って運転していたとしよう。新型『Cクラス』では、クルマが30の力を肩代わりし、ドライバーは70の力で済むようになった。70の力だけで運転しているのではなく、30の力はいつでも使えるように備蓄されているのだ。ドライバーは70だから疲れないし、いざという時は100を使える。
メルセデス・ベンツが『Cクラス』の安全運転支援システムによって「部分自動運転が実現できた」と謳っている。その“部分”という意味は、クルマがドライバーの負担を大幅に減らし、その結果として安全運転に寄与していることを示している。
完全な「自動運転」は実験段階では実現しているが、ナンバーを付けて公道を走る乗用車ではまだ少し先のことになる。“部分”といえども、新型『Cクラス』が内包している安全運転支援システムのはたすであろう働きはとても大きい。
文/金子浩久(かねこ・ひろひさ)
モータリングライター。1961年東京生まれ。新車試乗にモーターショー、クルマ紀行にと地球狭しと駆け巡っている。取材モットーは“説明よりも解釈を”。最新刊に『ユーラシア横断1万5000キロ』。