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60年代後半の横浜の不良とクルマのカルチャーが蘇る『ヨコハマ・グラフィティ ザ・ゴールデン・カップスの時代展』

2014.08.20

■“ナポレオン党”をモデルにした小説

 展示されていた写真は、興味深いものばかりだったが、中でも長い時間、足を止めさせられたのが、本牧の米軍住宅とその周辺を写したもの。1982年に日本に返還され、再開発が行なわれて今に至っている。その前後の様子が一目瞭然の展示もあり、面影を残しているところもあれば、まったく変わってしまったところもある。

 展覧会と連動して出版されたのが、同名の小説『横浜グラフィティ』(菅淳一著・幻冬舎発行)で、ナポレオン党をモデルに横浜の不良たちの一夜が小説仕立てで活写されている。ジョージ・ルーカスの出世作となった『アメリカングラフィティ』も、ルーカスの故郷カリフォルニア州モデストという街での1962年の夏の終わりのひと晩の高校生たちを描いた作品だった。

60年代後半の横浜の不良とクルマのカルチャーが蘇る『ヨコハマ・グラフィティ ザ・ゴールデン・カップスの時代展』

 青春映画の世界で近過去を肯定的に振り返るようになったのは、この作品から始まったのだけれども、『横浜グラフィティ』もまた横浜の昔の不良たちの生態を甘美に描き出している。展覧会もトークショーも、平日の昼間にもかかわらず当時を懐しむ中高年の男女で盛況だった。

 最初に開港したのは横浜だけではないし、米軍ベースのあったのも横浜に限らない。それなのに、横浜は今でも変わらず蠱惑的な光を放ち続けている。その光源は何なのか? この小説を読みながら考えてみることにしたい。展覧会は25日まで開催している。

■関連情報
http://www.takashimaya.co.jp/yokohama/event/syousai.html?id=1704

文/金子浩久(かねこ・ひろひさ)

金子浩久

モータリングライター。1961年東京生まれ。新車試乗にモーターショー、クルマ紀行にと地球狭しと駆け巡っている。取材モットーは“説明よりも解釈を”。最新刊に『ユーラシア横断1万5000キロ』。

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