“東京生まれの東京育ち”だからなのか、横浜に出かけると外国を訪れているような気になってくる。その理由は、日本の多くの街が疑似東京化していく中にあって、横浜だけは己の道を歩んでいるからだろう。それも当然かもしれない。長く続いた鎖国を止めた後に、東京よりもはるか先に開港して以来、世界に開かれてきた港町であり、第2次大戦後は本牧に米軍キャンプが置かれ、そこから米国の文化が入り込んできたこともある。だから、“横浜原理主義者”の人たちは悪態をつく。「東京みたいな田舎と横浜を一緒にするんじゃない」。まったく、そのとおりだと思う。
■ヨコハマ・グラフィティ
横浜は、コンパクトなサイズで海に面していて起伏があるところがいい。横浜の高台とゴミゴミした密集地をメタファーにして、不条理というものを黒澤明が描き出したのが『天国と地獄』だ。あの映画はロケも多用し、昔の横浜がどんなところだったかを忠実に描いている作品だ。
時代がもう少し下って、1960年代後半からの横浜の、主に若者の生態を当時の写真を中心に振り返った展覧会『ヨコハマ・グラフィティ ザ・ゴールデン・カップスの時代展』が先日、横浜高島屋で開催されていたので観に行ってきた。
軸となっているのは、(自称)不良グループ「ナポレオン党」の面々の写真や様々な展示物と、同じく音楽バンド「ゴールデンカップス」の展示だ。昔の不良だから、仲間とツルんでクルマで街を流し、湘南海岸ぐらいまでグルッとひとっ走りすることが遊びの中心となっている。ガールハントやパーティーなどもそこに含まれ、その様子を写したモノクロ写真がたくさん展示されていた。